貴子の目覚め
貴子の脳漿は機械兵士キャシャリンの電脳に置き換えられていた。元の貴子の大脳皮質は脳腫瘍に侵されズタズタになっていたので、貴子の人格と記憶をある程度読み取ってから取り外す措置を取られていた。また肉体の各所も機械化兵士だった時の組織を移植していた。だが、そうしたことで機械化兵士としての戦闘力の大半を失ってしまい、現在では情報処理能力程度しか残っていなかった。
そんな貴子の電脳が敵の存在を察知したのだ。かつて幾度もなく戦場で戦った時空聨合の戦術生物兵器の反応だった。やつらの目的といえば・・・地球上の生物のサンプリングしか考えられなかった。しかも、そこには詩織と千尋がいるはずだった。
「マリーさん。思ったよりも早くお客さんが来たみたいよ。しかもよりによって高橋さん・・・いやマリン隊長に接触したようね。いまの彼女はまだ記憶が戻っていないから撃退できない。はやく助けなくちゃ!」
そういって貴子はラインホルト親子の持っていた小さな金属の筒を受け取った。それは美術部の活動が終わった後で詩織に使うはずだった装置だった。そのとき貴子の前にひとりのものすごい肥満体女子の美術部員が立ちはだかった。
「島岡先生。新入生の二人の姿が見えないのですが、わたしが探しに行きましょうか?」
「あなた部長さんよね? いいよ、先生が探しに行くから。取りあえず部員を集めてからそこのマリーさんたちと一緒にいて。美味しいお昼を御馳走してくれるそうだから」
貴子は部長にそう言ったがマリーとローザはすこし迷惑そうな顔をしていた。この近所に美味しい食事ができるところなんて知らないと! それを察したのか貴子は一枚の紙を差し出した。それは公園から離れたファミレスの会員証だった。そして駆け出して行った。
「うーん、この惑星で活動できる戦術生物兵器といえばやっぱりマンダガー・タイプかな? あいつらは戦闘モードじゃないとわたしの索敵システムに反応しないからね。この惑星の生物と区別できないしね。 やっぱり、噂は真実だったんだね、この惑星を奴らも狙っているというのは。そういうことは奴ら全員を抹殺しないとわたしたちは生き残れないというわけだ。
とすると、マリンに事情を説明するのは諦めて戦ってもらうしかないよね。たぶん奴らに機械盟約の機械化兵士だとばれているだろうし。可哀そうだけど彼女にはこれで変身してもらうしかないわ」
そういって貴子は金属の筒に収められたテレビのリモコンのような装置を取り出して、走りながら何やらコードを打ち込んでいた。すると貴子の身体を銀色のレオタードのような物が包み込んでしまった。




