新城・ラインホルト親子
公園にマリーとローザのラインホルト親子がやってきていた。二人は西ドイツ出身のマリーと、日本人男性の新城宏次朗との間に生まれたローザで、西洋アンティーク店「ノイエブルグ」を親子で経営しているというのが表向きの顔で、元は機械盟約機構軍所属の宇宙強襲揚陸艦Γ50210の艦長ラーヌと整備兵ユリアンが関係者の記憶や公的書類を改竄してなりすましていた。本物は既に西ドイツに帰国しているのだが、工作によっていまも日本に住んでいると思わせていた。
ドイツ人に成りすましたのは、女子機械兵四人が日本人に近かったが、二人が金髪だったためだ。彼女らが所属していた部隊の先祖は全て過去に拉致されてきた地球人だったため、成りすますにはそれぞれの地球民族に近い設定にしなければならなかったためだ。
マリーとローザがそのままなりすましが出来たのは、人体改造を受けたのが内臓組織と電脳化措置で、体表だけは化粧で誤魔化せるレベルだったからだ。
一方、四人の機械化兵士は人体組織の大半を人工物に置き換えられ、しかもいづれも酷い損傷を受けてしまったので、日本人女性の遺体の中に移植させる方法で再生するしかなかった。
そんな方法で復活した一人が美術教師の島岡貴子に生まれ変わった政治士官のキャシャリンだ。彼女はマリンが小隊長を務めていた第815女子遊撃強襲機械兵小隊の兵士が政治的要求を行わないように思想統制していたが、自身はそんな立場に嫌気がさしていた。
そしてエルバ774では不穏な行動をしていた機械化兵士を尋問中に敵が放った地対地ミサイルにやられてしまった。そのとき尋問していた兵士は目の前で爆散し自身も大半の機能が停止した状態でユリアンに助け出されて、地球への亡命に入ることが出来た。
地球到着後半年後にローザが見つけてきた全身にガンが転移し脳死状態に陥った島岡貴子の脳漿とキャシャリンの電脳を交換し、がん細胞になった組織を除去して役に立たなくなった臓器を機械化兵士の部品と換装して復活させた。もちろん、貴子の家族や医療関係者の記憶は操作していた。
「ラインホルトさん、いらっしゃい。お店の方は大丈夫ですか?」貴子はあいさつしたが、そうするのも周囲に脱走兵士時代のことはばれないようにするためだった。
「お店は雇った大学生に任せているよ」
「でも、それってまさか?」
「いいじゃない、ほら暇だなんていっていたからあの子に任せたんだよ」
その任せた子も脱走機械兵のひとりだった。そんな時貴子の脳裏にあるメッセージが浮かんだ。




