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もともと、団体行動が苦手な仙道龍は憂鬱だった。
学生最後の修学旅行に浮かれるクラスメイトをバスの後ろから横目で見ながら
『何がそんなに楽しいのか?……』
ため息を吐き、一人、窓の外を眺めた。
龍がぼんやりと窓の外を眺めていると黒髪のポニーテールのクラスメイト・蒼井凛が
「何をしているの?……」
龍に話しかけてきた。
『はぁ?』
龍は突然、自分に声をかけてきた凛を不機嫌そうに一瞬、見たが
「別に……」
再び、窓の外を眺めた。
凛は一瞬、不満そうな顔をしたが気を取り直し、龍の横の席に腰を下ろした。
龍は眉間にしわをよせ、
「おい。自分の席に座れよ!」
自分の席の隣に座ってきた凛に文句を言ったが凛は自分の席を指差しながら
「だって…… 席、取られちゃったんだもん!」
と言い、持って来たお菓子を頬張り始めた。
龍が凛が指差した方を見ると確かに凛の席は同じクラスメイトの女子、数名に占領されていた。
「だからと言って、俺の席の隣に来ることないだろう?」
龍が凛に再び、文句を言うと凛はお菓子を頬張りながら
「良いじゃん。 席、空いているんだし……」
龍にそう言った。
悪びれた様子もなく、龍の隣の席でおいしそうにお菓子を頬張る凛を見ながら
「あのなぁ~……」
というと
「気にしないで…… 席が空いたら、すぐに戻るから……」
凛は鼻歌交じりに龍にそう言った。
そんな凛に龍はため息を吐きながら
「勝手にしろ……」
と言うと再び、窓の外を眺めた。
暫く、龍が窓の外を眺めていると何処からともなく、
『た、助けてぇ!……』
と女の子の声が聴こえてきた。
『え?……』
龍がびっくりし、隣の凛のことを見ると凛は鼻歌交じりにお菓子を頬張っていた。
「気のせいか?」
龍が気を取り直し、窓の外を再び、見ようとしたその時。
キキキィー!
もの凄い音のブレーキ音と共に龍達はバスの中で激しく躯を揺さ振られ、気を失った。