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15  そこへ至る道  side品木来栖


上位魔術 【雷の投擲】

雷を纏った二メートルくらいの槍を召喚する雷系上位魔術。

投擲したり、上空から射撃したりと応用に長けるが、コントロールが難しい魔術の一つでもある。雷属性は元々危険なため威力制限が掛かっており、厳重な非殺傷設定がされている。



特殊能力 《破邪》

邪気などの邪悪なものを寄せ付けず、憑りつかせないスキル。退魔系統の中では下位に位置する。このスキルでは、他人に対して力を発揮できない。


特殊能力 《直感》

人間が誰でも持っている第六感と呼ばれる部分を極端に過敏化させ、野性的本能を強化するスキル。自分にとっての最適を瞬時に判断することが出来る。


 ――きっと着けてくれるのは、自分じゃない。


 坂上、美都のおかげで中央戦線を独り突破した品木。彼に与えられた役割は、3-C大将『妖精戦姫』を撃破して、彼女が守っている十点オーブを手に入れることだ。

 この役割を与えられた時、ほかのクラスメイトでも対応可能なのではと思いもしたが、それは十村の言葉で一蹴された。


『一番奥で待っているのは、確実に『妖精戦姫』だ。バッキーやカズはんとかに任せたいんだけど……正直、二人には荷が重いと考えてる。それなら、唯一『妖精戦姫』と同格のユッキーに任せたいとも思ったんだけど……今回に限っては分が悪い』

『え、どうして?』


 十村の最後の言葉に待ったを掛けたのは、灯だった。灯りに同意するように双葉が頷き、久賀も同じく首を縦に振る。三人のように表には出さずとも、疑問に思っている者もいるだろう。品木とて、三人と同じ気持ちだ。

 灯の疑問に答えたのは十村では無く、雪音だった。


『相手はアタシと同じ《精霊使役》の持ち主。しかも、アタシよりも強力なの。妖精って言えば聞こえはいいけど、その中じゃ明確な上下関係……強いて言うなら、絶対なまでの弱肉強食が根付いてんの。強い《精霊使役》持ち主と、弱い《精霊使役》の持ち主……。弱肉強食をルールの大前提に。普通ならどっちに付く?』

『えっと……強い方?』

『正解。んで、強い方の《精霊使役》持ちってのが『妖精戦姫』で、弱い方がアタシってわけ』

『だからユッキーに任せると、どうしてもその点で戦況不利は否めなくなる。『妖精戦姫』相手に初期の段階から不利になるのは、避けたい。それで……シナくん、君だよ』

『……は? 俺? 坂上じゃなくてか?』


 突然のご指名に品木は思わずたじろぐ。何故に自分なのか分からない。『妖精戦姫』と対峙するならば、特殊能力《破邪》持ちの坂上の方がいいのではないかと思う。


『バッキーでもいいんだけど、確実性を高めるならやっぱり君なんだよ、『神殺し』くん』


 十村の茶化すようなその物言いに、品木は自分の雰囲気が強張るのを感じ取った。

 自身の異名となった『神殺し』。それは、自分が異世界で数十柱の神を殺したという事実を何処からともなくリークされ、今日まで呼ばれ続けているちょっぴり恥ずかしい名。

 ――だが、それがなんの役に立つというのだ。

 神を殺した事はあったとしても、妖精を害したことなど一度もない。品木が持ち得る特殊能力(スキル)のなかで『妖精戦姫』に有効といえるものは、祓魔の下位の特殊能力《破邪》と、魔法・魔術を構成する文言を破壊する《文言破壊》のみ。――たったこれだけ。

 基礎戦闘力と合わせても、『妖精戦姫』と対峙するには貧弱だ。それでも、十村は笑みを崩さない。


『うんとね、君の持つ《神力無効》って特殊能力、それがどうにも突破口らしいんだよ』

『ん?』

『《神力無効》って、要は《魔力無効》と同じようなもんでしょ?』

『少しだけ、違うがな……』


 十村の問いに、品木は若干の躊躇いを見せながら頷く。

 特殊能力《魔力無効》とは、文字通り身に降り懸る魔法的要素を一切無効化する力だ。他者からの魔法的要素を無力化するだけなので、自分の魔力に何ら影響はない。

 対して《神力無効》は、“自分に降り懸る神の所業に等しい事象全てを、無力化する”という内容からしたら、非常に物々しい特殊能力だ。しかしながらその内容はいたって平凡。要は身に降り懸る“奇跡”全てを無力化するだけ。――その中には、他の英雄たちが使用する魔法や魔術も入る。

 魔法や魔術。それは今の人類には扱う事すら出来ない奇跡の所業。アニメ・ゲームなどに存在したとしても、それは所詮幻想に過ぎず人の身が扱うこと罷りならん。この学校の生徒たちは、そういった“人が起こし得ない奇跡”に巻き込まれた人間たちの集まりだ。使えるようになったとしても、可笑しくはない。

 だが《神力無効》がある以上、品木の手にその“奇跡”は振り降りない。――ぶっちゃけた話、魔法や魔術が使えないという事だ。

 それ故、あらゆる奇跡を否定する力を有していたとしても、基本スペックは雪音に負けてしまう自分が『妖精戦姫』に対抗できるなど思えない。


『“あらゆる奇跡を否定する”。それが《神力無効》の最大の特徴だが、それが『妖精戦姫』に対してどう威力を発揮するというんだ?』

『あ、それはアタシから』


 十村に対してぶつけられた疑問に答えを上げたのは、雪音だ。


『アンタの《神力無効》……。それ、妖精たちからすると凄く臭い匂い放ってんだって』

『臭い!?』

『マジで!?』


 品木が思わず自分の体臭を嗅ぎ、近くにいた双葉が距離を取る。ほかの面々も、驚愕に目を見開いて品木を見やる。


『ちょ、俺にそんなこと言われても!』

『ダイジョーブだって! その匂いは、妖精たちにしか分かんないんだってさ』


 カラカラと笑う雪音に、そういうことはもっと早く言えと言わんばかりに責めの視線を向ける。‘サーセン’というふざけた謝罪を尻目に、雪音は言葉を続けた。


『でも、アンタの匂いを妖精たちが嫌うってことは、『妖精戦姫』が妖精たちを呼び出せないってコト。――即ち、彼女の最大の戦力である妖精の力を借り受けられないってコト』

『……!』


 盲点、その一言に尽きる。

 自分達の最大の敵となるであろう少女『妖精戦姫』――シャルロット・アガーテ。

 彼女の強さは結んだ妖精との絆にある。同じ力を有する『妖精女王』より力は弱くとも、妖精と共に戦い、それを経て得た絆は何にも代えがたいものとして存在している。

 故に、《精霊使役》持ちの中では上位として存在し、彼女よりも力の弱い雪音は妖精使役の場においては負けてしまう。


『だから『妖精戦姫』との対峙は、彼女の強さの元を断ち切れるシナくんと、その補佐に回れるふたばんを押すね』

『本多の力はあらゆる意味で非常識だからな。オールラウンドに立ち回れるだろう』



     ●



 与えられた役目を果たすためには、双葉と合流しなければならないのだが……。

 百メートル。二百メートル。三百メートル……。距離にしておよそ二キロを走り抜けた時、品木はその足を止めた。


「……ぬぐぅ……」


 戦闘前に確認したマップでは、中央を抜けた先、皆が最奥と呼んでいるその場所に到達するのはそう遠くなかったはずだ。なのに、この身は二キロ以上走り続けても辿り着いていない。

 いくら「3Dマッピング」でフィールドを書き換えたとしても、そこまでの広さは作成されていないはずだ。――ならば、導き出される答えは一つ。


(結界……それも迷い型か……)


 種子田高校で使われる結界の数は三つ。

 攻撃から身を守るための防御力に特化した防護型。

 有機物・無機物関係無く相手を拘束力に特化した封印型。

 相手の意識を阻害し、その場に留める異空間に特化した迷い型。

 この場合、適応されるのは三つ目の異空間に特化した結界だ。このフィールドとなった“密林”も、その要因を担っているのだろう。

 森は古くから‘入ってはいけない’と言われる禁断の地であり、その禁を破った者には相応の罰が下される。だが。森を抜けた先には、この世のものとは思えぬ幻想的な光景が広がっているという――――。

 中央を突破されるというのはある程度予想されていた。寧ろ、その予想を立てられていなかったとしたら随分と舐められているのだと憤りを覚える。だが、まさかこれほど複雑な迷い系の結界を仕込んでいるとは予想外だった。

 森の奥から現れた人影。それが味方ではないというのは品木が一番よく知っている。


「――こい」


 右手に乞うは、己が愛剣にして神殺しの剣。ただそこにあるだけで身を竦ませるほどの苛烈なまでの神々しさを纏った神剣デュランダル。それ故に、普段は現世と夢見の狭間にその存在を隠している。

 背中に背負う形で剣を構え、相手の出方を見る。腰を落とし、足を広げていく中で足元の砂と砂利が小さな音を立てた瞬間。


「……っ!?」


 背後からの奇襲を受ける。直前まで気配を完全に殺した接近は、流石上級生と言わざるを得ない。それをきっかけに飛び出してくる二つの人影。その手には三又の槍と、ハンドガンよりは大きくショットガンよりは小さい自動拳銃の姿。


「フルーレ、トライデント、サブマシンガン二挺……。全距離対応とは……」


 保険としての配置であると同時に、これ以上先には絶対に進ませないという明確な意思を感じ取れる。それほど、この場所は最重要地点にして、最奥へと続く最終防衛ラインなのだと理解する。

 だが、それは――――


(言い換えれば、此処を抜ければ『妖精戦姫』が待っている……!)


 デュランダルを盾として降り注ぐ弾丸の猛攻を耐え抜き、いつの間にか両舷に移動していたフルーレと三又槍の一撃を、足を半歩退くことで避ける。

 弾丸の嵐が止んだ隙を付いて地面に浅く突き立てていたデュランダルを引き抜き、一番厄介な相手である三又槍使いの方へと、身体を向けた。

 元々、槍相手に剣……取り分けパワーに重点を置く大剣は、相性が悪い。品木の得意とする攻撃は大剣の面の部分を使用した押し潰しや、力任せの叩き切り、広範囲の水平切りといったものばかりだ。

 対する相手の武器は、こちらの苦手とする“点”への攻撃を得意とする物ばかり。


「っくそ!」


 弾く。逸らす。避ける。受け止める。あらゆる回避行動と並行して攻撃を仕掛けるが、僅かな掠り傷だけを残してほとんどが避けられる始末。

 例え己との相性が悪くともそこは実力で欠点をカバーし、打開策を見出していくものだ。だが、この三人相手に、品木はどうしても打開策が見いだせずにいた。


(相性が悪いってだけの問題じゃない……。腐っても上級生ってか……!)


 品木が種子田高校付属中学に在籍していた時から耳にしていた噂。“今年の三年年は不作の英雄”という悪評に近いもの。当時の品木は中学一年生で、噂されていたのは二つ上の学年……つまり、現時点での彼らの事だ。

 クラスメイトの雪音や『魔王』有澤彰吾のようなに目だった生徒がいないことから付けられた悪評なのかと思いきや、調べてみれば『獅子王』『妖精戦姫』を始めとした数多くの実力者を有し、実力も中々。あんな悪評が流れる事自体が可笑しいと思ったほどだ。

 それでも流され続けた悪評。今でも彼らの中にしこりとして残っているであろうその噂。


(『魔王』、か……)


 種子田高校現生徒会長にして、生徒の中では“最強格”に分類される英雄――『魔王』有澤彰吾。高校からの外部入学の身でありながら、当時生徒会長として生徒たちの頂点に君臨していた『妖精戦姫』シャルロット・アガーテをその座から引きずり降ろした猛者。その力は圧倒的で、今でも彼に適うほどの力を持った英雄は現れていない。

 有澤が入学して以降その他の面々も続々と頭角を現し、今では種子田高校の顔といえば二年生とさえ思われているほどだ。生徒の頭が二年生である以上、学校の顔は大人が進藤義孝、子供が有澤であることも間違いではないのだ。――だけど。


(悔しいよなぁ……)


 年下に奪われた栄光のスポットライト。尊敬と畏怖を受けられるであろうその瞬間を。彼等はたった一人の英雄の手によって奪われたのだ。



     ●



 種子田高校にとって「年下による下剋上」は、一つの登竜門であり脅威に等しいものだ。

 下剋上をする側にとっては、自分の力を証明するための行為でしかない。しかしながら、される側にとっては、それまで積み上げてきた自分の全てを、たった一度の敗北によって奪われかねないのだ。――特に、自分の認めた存在が敗れたら尚更だ。

 その点で言うならば、『妖精戦姫』シャルロット・アガーテは現三年生の中でも最強格に近い存在だ。『獅子王』『海王』『空の覇者』の“三英雄”は、覇を競い合っていたとしても実力は均衡で、全ての勝敗は必ず引き分けている。故に、最強足り得ない。

 3-Bに関しては『鬼殺し』や『痛覚切断』、『黄昏の平原』『青の巫女』などの実力者はいるが、覇を競う舞台に上がれるほどの力はない。

 そして、3-C。クラス替えによって妖精や精霊など“この世のものではない存在もの”の扱いに長けた者たちが集まることとなり、その中でも長年ライバルと周囲から言われ続けていた『妖精戦姫』と『氷結の魔女』が一緒のクラスになったという事実は、瞬く間に広まり、彼女に勝負を挑んだ『魔女』が負けたという噂が広がるのもまた早かった。

 それらの事実を踏まえ、現三年生の間で“誰が最強か”と問われれば、真っ先に『妖精戦姫』シャルロット・アガーテの名が上がるのは、最早必然に近い。

 故に、三年の誰も「シャルロット・アガーテが三年の最強」というその事実を認めてはいないが、一目を置くくらいはしていたのだ。――そのシャルロットが負けた。

 付属の中学にもいなかった人間が。言い方は悪いがぽっと出の少年が。この学校の実態もまだ上手く把握出来ていない小僧に。……あの、シャルロット・アガーテが負けた。

 シャルロットを擁護するための言い訳はいくつも生まれ、時には彼女を負かした少年が卑怯な手段を取ったのではという悪評すら流れた。

 だが、シャルロットは自分を擁護する言い訳全てを一蹴し、ただ一言“彼……有澤彰吾に負けた私が弱かっただけ”と告げた。

 以後、種子田高校の頂点にはシャルロットを負かした有澤が立ち、シャルロットも生徒会長の座から追われ、副会長の椅子に収まった。





 だから、という訳では無いが、今の三年は有澤よりもさらに年下である自分たち一年に対して非常に厳しいところがある。かつて年下に苦汁を舐めさせられたからという理由で片付けるには、いささか納得できないほどに。

 そしてその厳しいところは、今この戦闘でも明らかとなっていた。

 時間にして五分程度。傍から見たらひどく短かったとしても、実際に戦闘行為を行っている品木たちにとっては酷く長いもので、焦りを抱かずにはいられなかった。


(本多妹! 一体いつになったら現れるんだ……!)


 本来ならば自分よりも早くこの場所に到達し、こいつらの相手をしているであろう双葉が此処にいない。坂上と美都の二人が、十村と遠野の予想よりも遥かに早く品木の突破口を作ってくれたのも要因の一つなのだろうが、それしても来るのがあまりにも遅すぎた。


「簡易詠唱――【アクセラ・シューター】、シュート!」

「電子呪文詠唱より引用。雷の印字、第十六章――雷の投擲!」


 巨大な一撃の隙間を埋めるように放たれる魔術の球体。そこから飛び出す細い剣先と、九ミリの弾丸の嵐。魔法や魔術は《文言破壊》で対応出来るから無問題としても、穂先の刃が潰れた刃物を眼前に何時までもこの集中力を保つのは、正直気が折れる。

 雑多となり、霧のように消えてきそうな集中力どうにか繋ぎ止める。今の品木の状態を表すのなら、薄い氷の上で命綱無しの綱渡りを強制されているようなものであり、千切れ掛けた集中の糸が切れれば最後、押し負けてしまうだろう。


(早く、早く、早く、早く――――)


 どれだけ絶望的な状況下に陥っても、最後には自分の力で解決しなければならない事態が多かった品木にとって、これほど切実に誰かを待ち望むというのは随分と久々に近い。

 今の品木には灯のアシストは発揮されていない。理由は酷く単純なもので、最終決戦である『妖精戦姫』との相対まで切り札として取っておくべきだという参謀チームの提案を受け入れたからだ。

 『妖精戦姫』の力は強大。相対するのが《神力無効》や《文言破壊》を有している品木であれど、灯のサポートが他の場所に分散されていては、有利な状況には立てないだろうという判断の結果だ。

 品木が『妖精戦姫』の元に辿り着いたら、灯は各地のサポートを打ち切る。それまでは、各方面の戦闘状況を有利にしておきたい。だからこそ、彼等は上級生である三年生たちと相対しても事を有利に運べていたのだ。

 いくら悪評を流され続けた年代だったとしても、そこは腐っても世界を救えるだけの力を持った英雄たち。二対一なら未だしも、三人相手となると防戦・苦戦は必須だと理解していたが、これほどだとは思わなかった。

 故に、今は切に双葉の到着を待ちわびる。――――――そして。


「……!? なんだ!?」


 窓ガラスを石で叩き割ったような、儚い破壊音。それと同時に、周囲の情景が霧へと姿変化させたと思ったら、次の瞬間、通路の合流地点のような場所へと風景が変わっていた。

 何事だと品木が目を回しそうになった時、聞こえてきたのは緩い声色の少女の声。


「ルーベラ! アーンド、かっぱえびせん短槍の雨!」


 その声と共に空から降り注ぐお菓子の数々。一・五メートル程の大きさへと巨大化したお菓子……ルーベラとかっぱえびせんが、フルーレ使いとトライデント使いの彼等の服へと突き刺さり、足止めを行う。


「なっ……!?」

「おかしいだろコレ!? なんで菓子が攻撃力持ってんだよ!?」


 予想外の攻撃方法に、相手側も思わず集中力が途切れる。品木も思わず“だよな!?”と同意を示す。

 ――ただし、口には出さない。


「プラース、アルファー! ドーナツさんに嵌っちゃえー!!」


 瞬間、上空からだるま落としの要領で落ちてきた巨大なドーナツ。それぞれ三つ二組に分かれてフルーレ使いと、トライデント使いをその輪の中へと通す。


「なんだよこれ! 抜けねぇ!?」

「デタラメで可笑しいお菓子たち……これは……!」


 振り返る。東側、雪音と共に進行していたはずの少女。品木が登場を切に望んだクラスメイト。


「――――へいほー」


 黄金の髪。蜂蜜色の瞳。身体から滲み出る不遜な態度に、やる気のないたるんだ口調。口に咥えた白い棒と、腕に引っかけた膨れたビニール袋。品木と同じ体操服に身を包み、胸元に“本多”と印刷された名札が煌めく――


「双葉ちゃん、とーじょーってね?」


 本多双葉がそこにいた。





NEXT


私立 種子田高等学校

『人類最強』の二つ名を有する英雄:進藤義孝が六年ほど前に設立した新設校。

表向きは様々な場所から有能な者たちをスカウトし、社会に貢献できる若者たちの育成を目的としている学校。高等部の校舎から少し離れた場所に付属の中学校がある。しかしスカウト基準の不明だったり、付属の中学校からエスカレータ式ではないなど、色々と不可解な部分が多い学校でもある。


正体は、近年異常発生している“地球人の異世界トリップ”から帰還した少年少女たちを集め、色々と狂ってしまった価値観のまま地球で暮らしていけるようにするために設立された更生機関兼ストレス発散場所兼高校。

それ故、高校は完全に異世界トリップから帰還した少年少女たちばかりで構成されており、教師たちも同じくトリップ帰還者。

付属の中学校は、中学時代から異世界トリップを経験した者たちの保護場所であり、本格的に更生教育を受けさせるのは高校になってから。

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