第一章 第八話
三人は、ある町「回先」に辿り着いた。
そこには、帝国戦争で戦った戦士達の像があった。
ただ今は帝国軍によって、「帝国戦争の英雄」の文字が「帝国戦争の罪人」に換えられていた。
そして、持っていたであろう刀の部分も、破壊されていた。
「さすがね、帝国軍…」
と暗い顔をして言う知念に、竜崎は言う
。
「…反乱の芽は、全部潰したいんだろうな」
「…」
稔の目は、険しくなっていた。
知念は像の下の文字を読む。
「何なに…帝国軍で反抗した五人の罪人」
『護國精鋭』
総方軍長…水上や壁を走る
北方軍長…瞬間移動をする
南方軍長…超高速で攻める
西方軍長…突進攻撃をする
東方軍長…分身能力を持つ
「すごい…みんな強そう」
読み終わった知念は感心している。
「…」
竜崎は、しばらく像を見ていた。
三人は必要な食料などを買い、町を出る。
竜崎は旅をしながら、宝石などを拾っては売り生計を立てている。
宝石などめったに落ちてはいないので、三人とも貧しい。
「…賞金首の妖でも倒せば、稼げるんだけどな」
竜崎がそう言うと、知念は聞いた。
「でも帝国軍の奴に会いたくないよね。あいつらが確認に来るんでしょ?」
「…まあな。一応、もらっておこう」
と竜崎は町の出口にあった、賞金首の一覧表を手に取った。
一覧表の一番上には、やはりあの男が載っていた。
『最重要危険人物、鎌田宗佑』
賞金は二千万金。
竜崎は、一覧表の下の方を見て言う。
「…こいつなら、手軽そうだな」
近隣の沼「おどろ沼」に出る大蛙だ。
「そこなら…えっと、結構近いよ!」
知念は地図を買っていた。
「…行ってみるか」
と竜崎は言い、三人は沼へと向かう。
道中はまた、稔の修行である。
「…稔は恐怖心がないから、どんどん強くなるよ」
「へへへ…」
褒める竜崎、照れる稔。
「…自分は昔臆病だったから、よく師匠に怒られたよ」
と言う竜崎の方を、知念は見る。
竜崎が、珍しく過去を語っている。
竜崎は語る。
「…戦いで恐怖心を持ちすぎる事は、危ない事なんだ」
「どういうこと?お師匠さま」
と不思議そうな顔をする稔に、竜崎は答える。
「…その場で震えてるのも、背中を向けて逃げ出すのも、隙だらけだ。真っ向から向かっていく方が、実は安全なんだよ」
「なるほどー」
と稔は納得している。
ただ竜崎は、稔のその恐怖心のなさが心配でもあった。
「ねえねえ!」
と知念が、寄って来て聞く。
「他にはどんな事を教えられたの?」
「…そうだな、身体の力は抜いておけ、精神の力は入れておけ。とかかな」
と竜崎は答え、知念はよくわからずも納得したようだ。
「おおー」
知念は更に聞く。
「その師匠は今は、どうしてんの!?」
「…今は…」
竜崎は悲しげな目で、一瞬稔の方を見て、
「…わからない。どこにいるのかも」
と言った。
知念はそれ以上、聞くのをやめた。
そして三人は、沼への入口に辿り着いた。