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侍-BLADER-  作者: oyj
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第一章 第七話

「待ちなさいよ」

村を出た所で、聞きなれた声がした。

「妻子を置いて出て行くつもり?」

竜崎の目の前に現れたのは、知念と稔である。

「…そんなに老けてないさ」

と竜崎は、静かに笑った。


「あんたがここに留まる人じゃないのはわかってる。でも、黙って出て行く事ないじゃない」

と言う知念に、竜崎は頭を下げる。

「…すまない」

そして、語り始めた。

「…怖いんだ」


「…人と関わって、仲良くなって…死別や決別で、失うのが怖いんだ」

と語る竜崎に、知念は言った。

「はあー?」

竜崎は続ける。

「…だからあっさり消えようとした。すまない」

知念が何か言おうとする前に、竜崎がまた口を開く。

「…でも二人の顔を見て思ったよ。やっぱり、それは間違ってた」


知念は言う。

「あんたの過去に何があったか知らないし、無理に話してくれなくてもいい…でも」

竜崎が、(サエギ)る。

「…わかってる。きちんと挨拶(アイサツ)を」

知念はそれを更に遮る。

「わかってない!」

「…え?」

戸惑う竜崎に、知念は続けた。

「あたし達は仲間!出逢って数日なんて、関係ない!」

「…あ、ああ」

と竜崎は戸惑いながらも嬉しそうだ。

稔は、ずっと優しい笑顔で二人を見ていた。


知念は続ける。

「だから…あたし達も、一緒に行くから!」

「…え?」

「そういう事で、よろしく!」

「…いいのか?」

「命の恩人に恩を返すのに、いいもわるいもないでしょ」


「あんた一人じゃまともに喋れないし、道にも迷うし…三人で旅したら、いいじゃん!足手まといなんて言わないよね!?」

と言う知念に竜崎はふっと笑い、

「…言うわけないだろ。ありがとう」

と言った。


「村のみんなには、もう伝えてあるから。後ろ、見て」

知念の言葉に竜崎が後ろを振り返ると、村人達が手を振っていた。

「元気でなー!」

「ありがとー!」

「知念をよろしくねー!」

竜崎は、笑った。

「…ははっ」

竜崎の考えは、見透されていた。


鎧屍が知念に迫った時、竜崎は初めて大声を出した。

知念はもう、竜崎にとって特別な存在になっていた。


「とりあえず、これからどうすんの?」

と知念が聞き、竜崎は答える。

「…『時定』を追いたい」

稔の顔が、険しくなった。

竜崎は更に語る。

「…『時定』は、知ってる奴かもしれない」

「そうなの!?」

「…妖と帝国軍を異常に怨んでる奴を、知ってるんだ」

「まあそんな人たくさんいるけどね。あんたが追いたいなら、協力するよ!」

と、知念は明るく笑った。


稔は、黙って下を向いていた。

「…すまない」

竜崎は、稔に謝った。

「大丈夫!純はあんたを守る!あたしは『時定』と話し合う!何も心配ない!」

知念がそう言うと、稔は笑った。

「お兄ちゃんお姉ちゃん、よろしく」


知念が言った。

「稔、あんたせっかくだから純に剣でも習えば?」

「え?」

「ただついてくより、為になるでしょ」

「…そうだな」

と竜崎が、知念に聞く。

「知念にも教えようか?」

「あたしはお色気担当だからいいや」

「…」

「…」

沈黙が、走った。


こうして三人は村を出て、竜崎は行商人から竹刀(シナイ)を買い、稔に与えた。

「これからは純の事を師匠と呼びなさい!」

と知念が言い、稔はそれに従った。

「はい!…お師匠さま!」

竜崎の頬が、紅く染まった。

稔は筋がよく、数日後には竜崎を支援できるほどであった。


「ガラララララララ」

武者屍(ムシャカバネ)』が現れた。

屍が鎧だけでなく、武具を持った強力なものだ。

「…稔、わかるな」

と竜崎は稔に声をかけ、稔はそれに返す。

「はい、お師匠さま!」

武者屍が刀を振り上げた瞬間、稔は懐に飛び込み一撃を与えた。

ふらつく武者屍に、竜崎は強力な突きを喰らわせる。

『鱗破り』

武者屍は消滅した。


「すごいじゃん稔!」

と後ろから駆け寄る知念に、稔は言った。

「お師匠さまに習ったんだ。自分に合った戦い方をしろって」

竜崎が補足する。

「…稔は小さいから、刀を受け止める力はない。でもその分相手も油断するし、急所を突きやすいんだ」

知念は稔の頭をなでながら、言った。

「稔は才能があるんだね!持てる力がついたら、刀を買おう!…純のお金で」

「…」


三人の旅は続く。

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