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侍-BLADER-  作者: oyj
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第一章 第六話

「ありがとう、お姉ちゃん」

と優しい笑顔を見せる人妖を、知念は誘う。

「ねぇ…あんた、あたし達と一緒に来なよ!」

「え?」

戸惑う人妖に、知念は続ける。

「こんな所にいても、さみしいでしょ?」

「お姉ちゃん…」

と人妖は戸惑っているが、嬉しそうだ。

竜崎は、微笑んでその様子を見ていた。


人妖は言う。

「ぼくは、妖だよ…」

「お友達に、そんなの関係ないよ!ね」

と知念は竜崎の方を向く。

竜崎は、大きくうなずいた。

「ありがとう!」

人妖はたちまち笑顔になる。

「あんた、名前は?」

と知念は聞き、人妖は答えた。

「人間だった頃の事、もうあまり憶えてないんだ」

「そっか…」

と、知念は寂しそうに言った。


知念は明るい顔をして言った。

「じゃあまず、名前をつけないとね!純、あんた考えて」

いきなり振られた竜崎は考えた。

「…え?なら、今度こそ人生が実るように、ミノルっていうのはどうかな」

知念はますます明るい顔をして言った。

「やるじゃん純!そんじゃあたしから一字取って…『(ミノル)』にしよ!いい!?」

「わかった!ぼくは今から、『稔』だよ」

と稔は、嬉しそうに微笑んだ。


「…でも、村に連れて帰って、大丈夫かな」

と、竜崎が心配する。

「平気平気、あんただって侍だけど受け入れられたでしょ!?あたしにおまかせ!」

そう言った知念は、不思議な女性である。

戦闘力は無いに等しいが、とても強い。

彼女は能力などとは違った、力を持っていた。


「それにあたしの村から、人間と妖の共存が広がっていけばもっと最高じゃん!」

とどこまでも前向きな知念に、竜崎は()かれていく。

ただ…稔は格好こそ普通の少年だが、波動をまとい、白目で白髪である。

「最初は怖がられるかもね…なら、こうしよう!」

と知念は、稔の手を取った。

「あんたはそっち!」

そして稔の反対の手を、竜崎に取らせた。

「…まるで親子だな」

と言う竜崎に、知念は言う。

「あたしはそんなに老けてない!」


三人は、村へと戻った。

「みんなー!聞いてほしい事があるの」

知念の大きな声に、村人達が寄って来る。

「何だ何だ?…!」

「おい、あれ…」

「手を繋いでるぞ…」

「大丈夫なのか!?」

村人達は、次々に集まって来た。


「本当にごめんなさい」

と、稔は深く謝った。

「妖が村に出たのは、この子の力が強すぎたせいみたい…でももう純が何とかしてくれたし、これからはこうして一緒にいられるから!みんなお願い、この子と暮らす事を認めて!」

と、知念はうまくごまかした。


知念は続けて村人達を説得する。

「この子、本当にいい子なの。森に一人で置いてくのは、可哀想」

「でもな…妖、だよな…?」

「夜になったら豹変とか、しない…か?」

と村人達は、さすがに戸惑っている。


「あんた達ねぇ…あたしの言う事が、信じられないってーの!?」

と知念が大声を出すと…

「ま、まぁ知念がそこまで言うなら」

「純さんもいてくれるし…」

「おい坊主、(アネ)さんについてしっかり働けよ!」

と村人達の反応も、変わり始めた。

「誰が姐さんよ!」

と知念は本当に、強い女性である。


「よろしくお願いします!」

こうして稔は、村で暮らす事になった。

竜崎も心配なので、しばらく村に残る事にした。

田畑を耕し、薬草や果実を採り…数日間、穏やかな日々を過ごした。


そして、ある朝早く…

「(…そろそろ、行くか)」

竜崎は、静かに家を出た。

「ニャー」

「…シーッ」

猫が寄って来る。

竜崎は、猫の頭をそっとなでた。

彼は動物が大好きだ。


「…またな」

竜崎は小声で呟き、村を出た。

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