第一章 第四話
二人は、森に辿り着いた。
昨日もそうだったが、昼でも薄暗い、不気味な森である。
知念の村の人々は、ここで薬草を採って売る。
竜崎は昨日は、ここには迷い込んで来ていた。
「…奥に行くぞ」
竜崎は、ひたすら前を歩く。
「う、うん」
知念は、戸惑っていた。
竜崎は、真剣な顔をして言った。
「…おかしい。なかなか進んでいる感じがしない」
「あ、あのさー、純…」
竜崎は、話しかけてくる知念の方を向いた。
「そっちは村の方だよ…」
「!?」
竜崎は、方向感覚が皆無だった。
「奥に進むなら…こっち」
「…すまない」
今度は知念が前を歩き、進み出した。
「純って強いのに、なんかぬけてるよね」
「…」
「あたしが来てよかったよ!ね」
「…ああ」
知念の方向感覚は、抜群だった。
「ヒャッヒャッヒャッ」
「オオオオ」
屍首、屍。
それに…
「カタカタカタカタ」
『鎧屍』が現れた。
屍が防具を着けたものだ。
「…下がって」
と竜崎は知念を下がらせながら長刀を抜き、左側に構える。
「おっ、あの技だね!」
と知念は目を輝かせる。
『牙折り』
竜崎の振る刀から大きな風の刃が発され、屍達を一気に消滅させる。
残るは三体…浮遊して動く屍首二体と、鎧屍だ。
竜崎は敵をよく見定め、狙いをつけると駆け出し、高く飛び上がった。
『角割り』
二体の屍首が上下に重なった瞬間、上方からの刃がそれらを串刺しにし、地面に叩きつけ消滅させる。
「すごい!すごいよ純!」
と歓喜する知念に、鎧屍が迫る。
「…危ない!」
と竜崎が斬り込み、同時に知念はその後ろに回った。
竜崎は言う。
「…こいつは硬い」
鎧屍は、『牙折り』と斬撃を受けても無傷のようだ。
「どうすんの?」
知念の問いに、竜崎は少し笑った。
竜崎は集中し、一気に刀を引き、突いた。
『鱗破り』
風の刃が槍のように、鎧屍を貫いた。
「ゴアア!」
そして鎧屍は消滅した。
知念は竜崎を称賛する。
「純…あんた、本当に強いね!」
「…まあ、人妖程度ならな」
竜崎は知念から顔を背ける。
「わかりやすっ…照れてんの?」
知念がそう言うと、竜崎の顔はみるみる紅くなっていった。
「あはは!おもしろ!」
「…もう行くぞ」
笑う知念を置いて、竜崎は歩き出す。
「また迷っちゃうよー」
知念は早足で追い越していった。
森の奥には、洞窟があった。
「…ここが怪しいな」
と言う竜崎に、知念は
「この洞窟?昔はよく中で遊んだりしてたけど…」
と教える。
二人は、洞窟へと入って行った。