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第五話

「では初戦。シード・アスペル対ヒルク・テンスタンはじめ!」


 アスペルの対戦者であるヒルクはかなり大柄な男だった。自身の体の表れか武器も非常に大きく重みのあるハルバードを使用していた。


「ふむ、見たところ君は一撃に重きを置いているようですが、それって当たらなかったら意味がないですよね?」


アスペル開始直後にそんなことを言った。いきなりの挑発である。が、


「あぁ、勘違いしないでほしい。これは挑発じゃない。私は挑発をすることであなたを貶めるなんて手を使わなくても問題なくあなたを倒せます。ですからこれは挑発に入らない、ただ客観的事実を述べただけですから」


 アスペルはにこやかに言い放つ。対するヒルクは頬を引きつらせながらも、ある程度冷静にアスペルを観察していた。


 だが、彼は自分の冷静さによって平常心を失うことになる。


 彼の眼から見るアスペルにはスキが一つもなかった。ゆるくかまえているような、構えていないようなそんな立ち姿だが、もし自分が攻撃を仕掛けたのなら、自分がこの世から消えていなくなるビジョンが離れなかった。ゆえに一向に足が進まない。


 ある程度の強さを持っているからこそ。敵に挑むことができなかった。無謀なことはできなかったのだ。


「どうしたんですか? こないのならこっちからいきますよ?」


「っく」


 アスペルはわかっていた目の前の大男が自分を恐怖の対象に見ていることを。しかしそれでいて、楽しむかのように言葉を投げかける。強者であればあるほどうかつに動くことはできない。その点目の前の男はよく現状を理解していたといえよう。


 だが、やはりアスペルという男を完全に理解することなど不可能だった。


 少なくともアスペルに相手を許す、もしくはギブアップを認めるという意思はない。


 ヒルクが戦うまでもなく降参の意を示そうとした瞬間、アスペルは音もなく動いた。


 右手をヒルクに向ける。手のひらには青光のエネルギーが収束する。魔法だ。使えるものは多くはないが少なくはない。それだけの人間が魔法を操ることができる。魔法は火をおこしたり水を出すなどの初歩的なものから、大岩を砕くエネルギーを放出することまで叶だった。だが少なくともそれはセンスがあるものならだ。たいていは初歩的な魔法そ使用するだけでせいいっぱいなのだ。だがアスペルは違う。彼には膨大な魔力が宿っている。


 それは彼の放つ魔法を見ればわかるものだった。その魔法に名前はない。ただ魔力を集め打ち放つ簡単な魔法。


 しかし、そこにこめられた魔力の桁が常人とはかけ離れていた。魔力が膨らんでは収束し、随時力を圧縮させて行く。その連続が一瞬のうちに行われたのだ。 


 ヒルクは驚愕に顔をゆがませる。


「う、ぁ」


 足をすくませながらも一歩二歩と下がってゆく。だがそれも無意味なことだと頭の中ではわかっていた。もしアスペルが攻撃を放ったら、自分など粉みじんになってしまうだろうとわかっていた。絶対に逃げ切れないことも。


「さぁ終わりです」


 そして周囲に爆風を撒き散らせそして轟音とともに放たれたエネルギー弾は世界を青い閃光に包み込んだ。


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