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第一話

 カナタ・ニシジマはボルトシア王国に足を踏み入れた。門は高く聳え立ち、そこを境に世界が変わる。門の中・・・・・・即ち王国内は雑踏に包まれ、喧騒が絶えない。和気藹々と談笑するものもいれば、商店を開き、大きな掛け声とともに商売をするものいる。


 うまそうな、肉を焼いた臭いがカナタの鼻をつく。

 カナタの腹からぐぅ~っと情けない音がなった。


「っく、腹が減った・・・・・・だが金がねぇ」


 現在の所持金はゼロに等しい。つまり金欠である。そもそもカナタがこの王国に立ち寄ったのは金を稼ぐためである。すなわち仕事探し・・・・・・今は仕事を探すことが仕事だといっても過言ではない。


 ボルトシア王国。

 世界の数多ある王国のなかで無二の国。外界との接触を極力避け、外交も軒並み行っていないといえる。


 そんな国が建国してからこれまでの年月を無事に過ごせたのは、ひとえに人口が他国とは桁違いに多いことがあげられる。


 数・・・・・・それはすなわち武力に直結する。だが人口が多いということはそれだけ食料や領土など莫大な量が必要になってくる。


 だがこの国においてはそれもあまり問題に上がらない。海産物を取れる海は近く、また農業や家畜などの飼育スペースも広くある。


 国民が住まうスペースを補って余りすぎるほどこの国は領土を抱えている。

 要するにこの国だけで国民を不自由なく養うことのできる力を持っていた。

 だが、それは他国との交流を断絶させる理由にはならない。

 では、何故交流の断絶を図るのか。もちろん完全に断絶しているわけではないが、少なくとも盛んではない。


 これは国王のわがままゆえに・・・・・・である。


代々国王の子は娘が多く、自分の娘を溺愛していた歴代国王達は、娘を遠く離れた異国の地に行かせたくなかったのだ。


 王の娘は他国との政治的提携の道具にされることが多い。


 そしてそれが国に莫大な利益をもたらすことだったとしてもボルトシア王国国王達は娘を手放すことができなかった。ただそれだけの理由である。


 バカバカしい話ではあった。だか彼らも所詮は父親だったのだ。娘たちには政略結婚ではなく、心から愛し合ったもの同士で結ばれてほしかった。


 ただそれだけのことである。

 それゆえにこの国は異端であり無二だったのだ。

 それが代々ずっとそうであったのなら、他国との結びつきを断絶しているといっても過言ではなかったのだ。


 カナタはひたすらにいい匂いを漂わせる街中を歩き続ける。腹の虫は泣き止まず、盛大に声を上げていた。


 人々は奇異の目線を向けるがカナタは気にするそぶりを見せなった。

 遠くから男の叫ぶ声が聞こえた。何か紙のようなものを必死にくばり・・・・・・いや投げ散らかしている。


 その大声に顔をしかめながら、男の投げ散らかしていた紙を拾い上げる。どうやら呼び込みのビラのようだ。


「なんだ? ボルトシア王国第三王女の近衛を選定。力強気、そして知性にあふれる勇敢な猛者達よ集え! 貴君らをわが城、ボルトシア城にて待つ・・・・・・か。まるで闘技イベントみたいな呼び込みだな。どうでもいいか」


 そうはき捨てるようにビラを捨てようとしたカナタだったが、ふと目に付くものがあった。


「なっ! 宿付き、三食支給、給金ありッ・・・・・・だと! おいおい、うまい話じゃねぇか・・・・・・んな、選定日って今日かよっ! 時間は?」


 時間は夕刻、いかんせん遅い気はするがカナタにとっては好都合だった。


「ってもあまり時間はないな、しゃーない走るか!」


 まるでカナタの掛け声に答えるかのように盛大に腹がなった。




 カナタの駆け足は予想以上に早く城に着かせた。城の壮大な門構えはもちろんきらびやかで豪奢なたたずまい。


 それらは多少なりともカナタを圧巻させた。


「ほへぇ~さすがにでけぇな」


 そんなカナタに門番は、訝しむ様な目を向ける。

 だがそれも仕様がないことだった。

 擦れた服装は貧相に見立て、腰には叩けば折れてしまいそうな剣。顔は少しばかり、見れるようだが、髪はぼさぼさで清潔感が余りない。


 そもそも、そんないでたちの男がこの城に近寄ることが今までなかったのだ。カナタを警戒してしまうのはまかり間違っても悪いことではない。むしろそれが通常の反応であり正しい形である。


 無法者を簡単に城に近づけさせるようであればそれは門番失格である。


「おい、キサマ! そこでなにをやっている!」


 門番は左右に一人ずついたが、二人が同時に詰め寄ってきた。カナタはすぐに両手を上に上げた。


「いやいや、ちょいとこのチラシが目に入ったものでね」


 飄々としながら門番たちにチラシを見せる。それは近衛選定のチラシだった。


「っつ、キサマの様などこの馬の骨ともわからない者がこの城に入れるわけがないだろう!」


 門番は持っていたチラシをつき返しここから離れることを促した。しかしそれであきらめるもとい、そんなくだらない門番の主観で帰るような男ではなかった。


「いやいや、それはあんたらが決めることじゃないだろう? このチラシには貴族以外は来るなとも、馬の骨以外じゃないとダメとも書いてねぇだろ。俺は確かに馬の骨かも知れねぇけど、ここで門番やらされてるようなお前らよりはよっぽど役に立つぜ?」


 両手を左右にかかげ肩をすくめる。それが門番たちのプライドを大きく傷つけた。


「言わせておけばいい気になりやがって」


 そういって、二人は腰に掲げていたロングソードを抜いた。完全にカナタという不届きものを切るつもりらしい。


「おいおい、物騒だな。いい気になってたつもりもねぇし言わせていただいた覚えもねぇ。俺自身が言いたいから言ったんだ。まぁいいや、じゃあ、お前らぶっ飛ばしたら中に入るの許してくれろ」


 返事はなかった、門番達はカナタを斬る為だけに足を進める。そこに交わす言葉など微塵もなかった。


 カナタは再び肩をすくめる。


「やれやれ、本当に物騒だな」


 そうつぶやいてカナタは門をくぐった。それは、まるで門番など最初からいなかったかのように。

 カナタが悠々と門をくぐる後ろでは門番たちが静かに寝息を立てていた。


矛盾とか色々でてくるかもしれませんがお許しください。ご指摘いただければ可能な限り直したいと思います。

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