一章:小さな異変。
オレの家はごくごく普通の家庭だった。
七人家族、曾婆さん、爺さん、婆さん、母ちゃん、父ちゃん、弟、オレ。
幸せな日々だった。
休日には父方の婆さんの家とかにも遊びに行ったり。
でも…、その日は確実に迫っていた。 ガキながらに些細な変化にもどこかで感づいてたんだと思う。
だから、そのころ家にあった不安になる感じが嫌いだった。
友達の家に遊びに行ったりもした。
これが2001年の秋の話し。
ーーーーーーーーー しばらくしてからあまり父方の婆さんの家にも行かなくなった。
理由はよくわからなかったけど、母ちゃんは悲しい目をしてたから、何となくだけど聞いちゃいけない気がした。
秋のある日曜日に衝撃的なことを聞いた。
いや、聞いたというより聞いてしまったというほうがいいかもしれない。
オレは話し声で目が覚めた。
母ちゃんと父ちゃんがケンカしてるみたいだった。
お金がどうとか、オレがどうとか、そんなコトを話していた。
オレは当時小学五年生のガキだった。 だから話してる内容の意味はよくわからなかったけど、何かとても悲しかった。 オレは布団の中で泣いていた。
ふしぎと声は出なかった。
オレは泣いてるのがばれたくはなかった。
母ちゃんの涙は見たくなかった。
悲しい顔は見たくなかった。
オレは、ただ、泣いていた。
ただ、泣いていた。