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CO インフレですね。

Twitterしてて我慢できなくなった。反省はしている、後悔はしないでおこうと思う。

とりあえず「悪い点」に「誤字がないこと」って書いてもらえるよう頑張る。

 八条の光が踊った。


 巨大な蛇のように自在な動きで、光の刃は辺りを蹂躙した。


 飛び散る、黒い血液。


 獣達の首が、足が、胴が、臓物が、切断される。


 それでも獣の渦は崩れない。


 一体何匹いるのか。


 数えるのも嫌になる。


 獣は黒く、海のように世界の果てまでをも埋め尽くす。


 ……この世界は、もう駄目ね。


 神様から、今回の件を処理する為ならば世界の百や二百滅ぼすのもやむをえないと、それに対する許可は貰っているが……それでも、少しばかり気が重い。


 こんな有り様でも、世界は世界。


 しかも獣が群れていると言うことは……餌がいた、ということ。


 一体どれほどの命を育むゆりかごだったのだろう。


 それも、もう役目は果たせないけれど。


 ――気に喰わない。


 空から巨大な黒い結晶がいくつも墜ちて、獣を圧し潰す。


 さらに、落下して砕けた結晶は槍となって、辺りの獣を掃討していった。


 掌に爪が食い込む。


 偉そうなことを言えるほど私は真っ当じゃないけれど……それでも。


 この命を漁るだけの獣は、認められない。


 生きる為だろう。


 繁栄する為だろう。


 それは生物としての当たり前の本能。


 でも……そうであったとしても。


 十本の海の底までをも貫く大槍と六本の山すら断ち切る大剣が降り注ぐ。


 衝撃で、獣が消し飛んで行く。


 気に入らないのよ。


 煩わしいのよ。


 その全てが、受け付けられない。


 命があれば、そこに愛が生まれる。


 それを壊すだなんて……本当に、気に喰わない。


 虹色が空を覆った。


 そこから、幾千幾奥の極光で形作られた武器が雨のように降り注ぐ。


 何もかもが打ち砕かれる。


 そもそも、私個人の意思を抜きにしても、これはあまりに危険だ。


 世界から世界へ広がっていく獣の群れ。


 これがまだ、世界間の移動が出来る程の力を持つ獣の群れ、というだけならばマシだった。


 獣達の雄叫びが重なる。


 この世界から逃げようとしているのだろうか。


 でも無駄。


 この世界を覆う力がある。


 それが、獣を一匹たりとも逃がさない。


 強固な壁は時に盾になり……時に檻となる。


 ……不意に。


 獣達の気配が変わる。


 逃げることが不可能と悟ったか。


 ――引き裂け。


 声。


 ――切り裂け。


 それは、獣達の声。


 ――喰い千切れ。


 なんて不吉な音。


 ――どこまでも広がって行け。


 なんて不快な音。


 ――我等は獣。黒い獣。


 ああ、もう本当に、我慢が出来ない。




 ――――――――――――――――《顕現》――――――――――――――――




 獣達が光の粒子に変わり、次の瞬間、獣達は、別のものへと姿を変えていた。


 あるものは、牙。


 あるものは、爪。


 あるものは、血。


 あるものは、肉。


 あるものは、瞳。


 獣の群れは、獣となる。


 ぞくり、と。


 背筋を冷たいなにかが伝う。



「これは……」

「マズいんじゃないの?」



 アリーゼとウルが冷や汗を流す。


 圧されてどうするのかな。


 思わず苦笑してしまう。



「うわあ、凄い殺意」

「というよりは、狂気だろう」



 ナンナとヨモツも態度こそ普段どおりだが、《顕現》が揺らいでいるのが分かった。


 狂気か。


 ふうん、これが狂気?



「甘っちょろい」



 右手を獣に向かって差し出す。


 甘い、甘い、甘すぎる。


 こんな狂気、まるで蜂蜜漬けだよ。


 ただ食らい、増えて、また食らう。そんな、欲を満たすだけの狂気なんて大したものじゃない。



「これならまだ、私の狂気(あい)のほうがいい。って言っても、五十歩百歩かな?」



 くすりと笑みを一つ零す。


 刹那。


 獣の身体が、真っ二つになる。


 断面から、ぼろぼろと小さな獣達が落ちて行く。


 絶対的な破壊の《顕現》。


 獣達の瞳に、怯えが宿った。


 ――怯えた。


 考えたよね?


 自分が負けることを。


 自分が蹂躙されることを。


 なら、私の勝ちだ。


 とどめに、さらに獣の身体を割断する。七つの大きな塊に分解され、そこから小さな獣が零れ……消えて行く。


 《顕現》したまま自らの敗北を視た時点で、もう決着はついた。


 獣達は、跡形も残さずに消滅する。



「さて……」



 振り返る。


 彼女達は、呆れたような目を私に向けていた。



「流石、無茶苦茶ですね――月葉さん」



 笑顔でティナが言う。


 ……なかなか、はっきりと言ってくれるなあ。



「ま、エリスほどじゃないよ」



 それはそうだ、と皆が頷く。


 そうだよね。


 エリスはもう、あれだよ。うん……凄いし。



「それより、さっさと次に行きましょう。獣は今もどこかの世界で増え続けているんだから」

「そうね。これ以上増えられたら、困るもの」



 ウルが溜息をつきながら肩を竦めた。



「だね。世界がどんどん壊されてくのは、あんまり気持ちのいいものじゃないし。なにより――」

「エリスさんとのデートが最近全然出来てません」



 ナンナの言葉をティナが横取りする。


 ……まったく。


 エリス好きなのもいいけどさあ、世界の危機とそれ比べちゃうって、どうなのかなあ。


 神様が聞いたら頭抱えちゃうよ?


 ――ふと、思う。


 羨ましい。


 こんなに想われているエリスが。


 ……いいなあ。


 エリスは今ごろ、どこにいるかな。


 雑魚の始末を私達に任せて、獣の頭を潰しに行くって言ってたけれど……。


 まあ、すぐに解決しちゃうか、エリスなら。


 それまで皆のお守はしておいてあげる。


 姉ってのも大変だ。


 妹の為に頑張らなくちゃいけないんだから。



 右肩をおさえる。



「やれやれ、ね」



 困ったものだ。


 私もまだまだ、ということか。




 右腕一本もっていかれるなんて、不覚にもほどがある。




 これでも自分を信じることには自信があったのだけれど……駄目駄目だわ。


 肩口からゆっくりと光の粒子が腕を再構築する。


 普通なら一瞬で終わるんだけれど……それほど桁違いだったということか。


 あと一瞬逃げるのが遅かったら……まあ、死んでたでしょうね。


 呑気にそんなことを思いながら、口元に手を当てる。


 さて……。


 これは、厳しいわねえ。


 なにせ――。





 ――この私が、獣のリーダーのところにたどり着くことすら出来なかったんだから。




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