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IF なにこの家族。怖い。

「起きなさい、ほら」



 身体を揺さぶられる感覚。


 意識が、暗闇の中から浮かびあがる。



「ん……」



 瞼を開けると、おそろしく綺麗な顔が視界に飛び込んできた。


 ……綺麗過ぎるのもあれだよなあ。


 なんか、むしろ寝起き一番に見ると、心臓に悪い。



「……おはよ、姉さん」

「ええ、おはよう寝坊すけさん。早く起きなさい。もう朝食の準備は出来ているのだから」

「分かった、すぐ着替えてリビングに行くよ」



 頷くと、姉さんが俺の部屋を出て行こうとして、ふと振り返る。



「そういえばライスケ。今日は私外泊するから、晩御飯と明日の朝食は臣護と相談して、二人のどっちかで用意しておいて」



 言われ、すぐにそれがどういう外泊なのかを理解する。



「あー、またか」

「また、よ」



 まったく。


 どうせティナさんの家――というか屋敷か――に恋人全員集めていちゃつくんだろうなあ。


 我が姉ながら……本当によくあれだけの女子を落としたもんだよ。


 同性愛ここに極まり、って感じだな。


 でも……親しい人間の誰一人として姉さんの性癖に疑問一つすら抱かないのは、流石ってところか。



「ライスケは起きたか?」

「ええ」



 リビングにエリスが戻ってきたのを見て、声をかける。



「あと臣護。姉を呼び捨てというのはどうかと思うのだけれど?」

「お姉ちゃんとでも呼んで欲しいのか?」

「ええ。是非とも」

「……遠慮しておく」



 食えない姉だ。



「それにしてもライスケが朝食の準備が終わるまでに起きないなんて珍しいな」

「昨日は帰りが遅かったでしょう? 多分、ウィヌスやメル、イリアあたりに引っぱりまわされて疲れでもしたのではないかしら」



 なるほどね。



「ライスケも、いい加減はっきりさせないと駄目だと思うのよね」

「なにを?」

「誰と付き合うか。もしくは、全員と付き合ってしまうか」



 聞いて、呆れた。



「あいつにハーレム作る甲斐性があるか。というより、そんな非常識なことをするのはお前くらいだ」

「あら、愛があれば全ては許されるのよ?」

「……そうかい」



 溜息を吐く。


 エリスはこういう人間だと分かってはいるものの……これと血が繋がっていると思うと、ちょっと気が滅入る。


 嫌いなわけではないし、その生き方なんかを否定するわけではないが……。


 とりあえず俺はこんな風にはならないようにしよう、と心に硬く決める。普通なのが一番だ。



「で、臣護はどうなの?」

「なにがだ?」



 いきなり聞かれても主語がないんじゃ分からない。


 俺はエスパーじゃないんだ。



「決まってるじゃない。悠希との仲は進展してるの?」

「……なんのことだ」

「とぼけなくてもいいのにね」



 笑んで、エリスがテーブルを挟んでで俺の向かいに座る。


 テーブルの上には、エリスが用意した朝食。


 今日は和食の献立だ。


 ご飯に味噌汁、海苔と焼きシャケに卵焼き、あとは漬物と……まあ、なんとも朝食らしすぎる朝食である。


 その味が絶品なのは、まあエリスが作ったのだから間違いはないだろう。


 我が家の朝食は毎週、家族三人でローテーションを組んで作っているが、やはりエリスの週は朝から気力が沸く。



「ごめん、遅くなって。それとおはよう、兄さん」



 そこでやっと、リビングにライスケがやってきた。



「ああ、おはよう」



 ライスケが俺の隣に座る。



「さて……それじゃあ、食べましょうか」



 三人がそろって、ようやく朝食を食べられる。



「「「いただきます」」」



 三人で同時に言って、箸を手に取る。


 まずはシャケに箸をいれて……うん。やはり美味い。


 完璧な焼き加減は勿論、素材からエリスが厳選したものなのだから当然ではあるが。



「そういえばライスケ。受験勉強ははかどっている?」



 ご飯をのみこんでから、尋ねる。



「……朝から勉強の話かあ」



 ライスケのテンションが幾分か下がった。



「んー、まあそこそこだよ。姉さんほどとんでもない高校は無理でも、兄さんより上くらいは狙えるかな、と」

「言ってくれるな」



 臣護がライスケの横で苦笑した。



「でも臣護が勉強を苦手としているのは事実よね」



 言うと、臣護の頬が引き攣った。



「ぐ……いいだろ。ちゃんと別のところで補うさ」

「そうね」



 臣護はしっかりしているから、勉強なんて出来なくてもどうにでもなるだろう。



「まあライスケも、頑張れる範囲で頑張ればいいわ」

「そう言ってくれると助かるよ」



 微苦笑し、ライスケが味噌汁に口をつけた。



「……俺の姉と兄はどっちも凄いからさ。弟としてはいろいろプレッシャー感じるし」



 あら。



「私達はそれほどのものじゃないわよ。ねえ、臣護」

「ああ」



 すると、ライスケが半眼になる。



「どの口がそんなこと言うかなあ……」

「ライスケ。そんなに自分を追い詰めることはないわ。それにね、貴方が私達を凄いと言うのなら、貴方はその私達の弟なのよ? なら、貴方だって凄いに決まってる」

「……それ、理屈になってる?」

「なってるわよ」



 断言する。


 確かにライスケは、ちょっと頼りないところもあったりするけれどね。


 でも私は……臣護だって、ライスケはいざという時は頑張れる弟だと知っている。



「ライスケ。貴方は、少し自分を過小評価し過ぎよ。根暗は嫌われるわよ?」

「む……気を付ける」

「それでよし」



 ふと、時計を見る。



「それより二人とも、そろそろ急がないと学校に遅刻するわよ」



 途端。


 二人の箸の動きが早くなった。


 ああ……我が家は今日も平和だ。

前に活動報告に載せたやつをそのまま引用。

まあほら、話数は多いほうがなんかいいじゃない。

セコいとかいうな!

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