表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第一話 名前

揺れ続ける気持ちや、まだ名前のない思考を、

ひとつずつ光にかざすように書きました。

何かを決めつける物語ではなく、

“途中にいる自分”の静かな輪郭をたどる一話目です。


ぜひ、あなたの好きなように呼んでください。

何者かになりたい。せめて、名前が欲しい。


悪役でもいい。嫌われ者でもいい。輪郭さえあれば、それでいい。


私は、何かになりたい。


なろうとして、黄昏れてみた。影のある横顔を演じてみた。でも、それはただの自惚れだった。


なろうとして、ギャルにもなった。笑って、騒いで、まぶしく振る舞った。でも、それもただの自己満足だった。


大人は言う。努力すればいい、と。陰ながらに頑張っているつもりの私は、その「つもり」に甘えているのかもしれない。


限界を決めているのは、いつも自分だ。そう思えるほどには、もう子供じゃない。


それでも。


何にもない。


波風ひとつない大海原に、理由もなく投げ出されたみたいに、私はここにいる。


自分で波を立てればいい?叫べばいい?壊せばいい?


でも、誰が気づいてくれるの。


認められたい。自分が何者なのか知りたい。たったそれだけの願いが、どうしてこんなに重たい。


これは傲慢なのだろうか。


夜になると、泣き声が部屋に溶ける。広すぎる空間は、私を飲み込もうとする。


たぶん、これを孤独と呼ぶのだろう。


けれど十五歳の私は、「孤独」という単語だけを知っていて、その正体までは知らない。


大人も、百歳の老人も、本当にそれを知っているのだろうか。


知らないほうが幸せなら、なぜ知ってしまった人は、あんな顔をしているの。


孤独を知っている人は、それでも何者かではある。


私は?


置いていかないで。


——私だけなの?みんなも同じなの?


そんなこと、誰にも聞けない。友達に言えば自惚れだと笑われる。大人に言えば思春期だと片付けられる。


じゃあ、全員が通ったの?——違う。じゃあ、誰もわかってないんじゃないの。——でも。


この往復だけが、頭の中で続いていく。


答えは生まれない。善意だけが積もっていく。


私は孤独になりたいわけじゃない。孤独を語りたいわけでもない。


ただ、


たった一人でいい。


誰か一人でいいから、


私を名付けて。


私を、何者かにして。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ