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また目が覚めた。なかなか寝付けない。携帯の時間を見ると夜中の3時前。最近はいつもこうだ。昔は12時前には布団に入りすぐ寝れてたはずだった。夢もちゃんと見ていて昼前くらいまでは覚えていたものだ。最近は夢を見たのか見てないのかわからないほどにすぐ起きてしまう。最後に夢を見たのはいつだろう…そんなことを考えながら電気をつけコップに水を入れ飲む。冷たい水を飲みながらこたつに入ると暖かくもないのにベルがいた。飼い猫のベルだ。冷たい私の足にびっくりしたのか慌てて出てくる。あまり鳴かない猫だが少し怒っているのかかわいい声で私を呼びおやつの催促をしてきているみたいに「にゃーん」と鳴く。申し訳なくなりおやつを一つあげるとまた、おこたに戻り眠る努力をする。どうせ布団に入っても眠れないのだ。明日のことは考えないように、ベルと眠ることを考え目をつぶった。
「おきてー!ねぇーおきてよー!」
誰かが私を起こしてる?‥ベルしかいないこの家に?!びっくりし飛び起きると見知らぬ女の子がいた。昨日はベルとこたつで寝ていたんのでは‥と思い返しながら辺りを見渡す。全く知らない場所だ、「ここは‥」と言いかけると女の子が話しかける。
「よかった、ずっと目を覚まさないから、心配していたんだよ、体は痛む?」
そういわれてみれば頭が少し痛む。
「お姉ちゃん頭打ってずっと寝てたんだよ。ママにお姉ちゃん起きたこと話してくる!」
そういってバタバタと部屋から出てい行った。‥ん???私天涯孤独だよね?!小さいころから施設に入っていたし‥まってベルは?!少し頭を動かすだけで眩暈がする。探すのをあきらめていたら「にゃーん」と声がする。鳴き声の先に目をやるとベルがこちらに歩いてくるのが見えた。女の子が出て行ったことで入ってこられたのだろうか。そんなことをぼーっと考えていたらいつの間にかベルはベットの上にいた。ベルは珍しく私の顔に近づき、心配でもしているかのように匂いを嗅ぐ。頭をなでながら大丈夫だよというとベルは丸くなり寝る体制に入った。しっぽが長くとんとんとちょうどいいリズムで動きそれが眠気を誘いそのまま寝てしまった。
「‥ないじゃない‥から、もう‥」
‥誰かの声‥誰‥?
「ほらー!!!!!起きた!起きたよ!!嘘じゃないでしょ?!」
元気な声でまた起こされる。また女の子が心配そうに覗いている。
「大丈夫なの?!痛くない?!心配したのよ。」
優しそうでやわらかい声で女性が話しかける。
「はい‥大丈夫です。あの‥」
「何があったの?覚えてる?」
心配しながらも少し怒っているかのような声だ。そんな声でまたも私はここがどこか聞けなかった。
「えっと‥ごめんなさい‥覚えてなくて‥」
その言葉しか出てこず申し訳なさそうに俯くと
「そう‥わかったわ‥ところで‥なんでままにそんな硬い言葉なの‥?」
女性が悲しそうに矢継ぎ早に言う。
「え‥えええええ?!まま?!」
女性と女の子はびっくりした顔で見合わせゆっくりと色々教えてくれた。
私の名前はローズ・ブリタニア、フォードポール国のブリタニア領地の娘みたいだ。女性は私の継母スチュアート・ブリタニア、どうやら血は繋がっていない継母だ。そして女の子の名はマリー・ブリタニア私の3歳下の妹マリーだった。
全くわけのわからないまま話を聞いていると、14歳で迎える儀式の途中で猫が乱入しその拍子で頭をぶつけ倒れたという。どうりでずっと頭が痛いわけだ。
マリーはずっと私のそばから離れず看病をしていてくれたみたいで目を覚ましてすごくご機嫌だ。
「お姉ちゃん!よかった!でもなんで猫なんて‥。あああああああ!その猫ちゃんだよ!目覚めの儀式のときにお姉ちゃんの邪魔をしたのは!!」
ベルを見つけるなりマリーは怒った声で叫ぶ。
「この子は大事な子なの!傷つけてはだめ。」
私が制しベルを抱きしめるとマリーは驚き
「その猫ちゃん、お姉ちゃん知っているの?」
知っているも何も私が拾った子だ‥でもなんて説明したらいいか困っているところに
「ローズ!!ローズ!!」
大きな声で私を呼ぶ男性の声が聞こえる。
「ああ、パパが帰ってきちゃった‥。お姉ちゃん‥」
マリーが気怠そうに私のほうを見る。
ドタバタと音を立て勢いよく扉が開いた。
「ああ、私の宝物‥大丈夫かい?!何があったんだい?!」
見た目はすごく怖そうな感じだが聞こえる声は優しく心配している声だ。
「ぱぱ、今マリーたちが聞いたしそんな大きな声だとお姉ちゃんびっくりするよ」
「そうよ、あなた。ローズちゃん、びっくりしているじゃない」
そんな声で我に返ったのか優しい眼差しで男性が深呼吸した後にゆっくりとした口調で話し始めた。
「私も目覚めの儀式に参加したかったのだが、最近魔物たちが活発になってしまってな。急遽エナメール国の国境まで朝から出てしまって。まさかローズが倒れるなんて‥聞いた時には私も倒れそうだったよ。今は落ち着いたのかい?」
ま、魔物?え、この世界線は‥どんな世界線なの‥頭がついていかない‥
「どうやらローズちゃん記憶がないみたいなの‥今までのね…」
継母が男性に向かって話すとまた驚いたように私に話しかける。
「じゃあ、私のことも覚えていないのかい?」
「‥はい‥ごめんなさい‥」
か細い声で伝えるのがいっぱいだった。今まで人に優しくしてもらった経験がない私はなんて返していいかわからなかったのだ。家族という形自体未経験すぎたのだ。
「そうか‥私はローズの父親だ、父親のネイサン・ブリタニア。スチュアート、神父と話したのかな?儀式はまだ終わっていないのだろう。」
暗い声色で父と名乗る男性の顔を覗く。すごく悲しそうでどうしたいいかわからないみたいな顔だ。
「ええ、そうみたいなの。マリーが起きたと報告をくれたときに使いを出したからそろそろ来る頃だと思うけど‥とりあえずローズちゃん今は休みなさい。神父様がいらしたらまた来るようにしますから」
継母の一言で皆部屋から出ていった。いろんな疑問が頭をかき乱している。聞きたいことはたくさんあるのだが、理解が追いつくのか、これは現実なのか、はたまた夢なのか。
そう思いながら、神父とやらが来るのを待った。
誰もいなくなった部屋で首元を触る。暖かいぬくもりとふわふわな毛並み、ベルを触っていると落ち着く。あんなに騒がしかったのによく寝れているな、なんて思いつつ部屋を見渡す。
よく見てみると、きれいな窓にきれいなテーブル。私の部屋ではないことがよくわかる。すべて高そうなものばかりだからだ。私が住んでいた部屋はこんなに広くもなくテーブルなんておけるスペースもないからだ。こだわりがあったわけではない。でも女の子なら一度でも憧れるような家具がこの部屋にはたくさんあるのだ。
そんなことをぼんやり考えていると、またドアの向こうが騒がしい気がする。
きっと神父様とやらが来たのだろう。
「お邪魔するよ。体調は大丈夫かな?まさか目覚めの儀式であんな乱入事件が起きるとは‥すまないねえ。」
少し悲しそうな声で神父様が話しかけてくる。
「だいぶ良くなりました。ご心配おかけして申し訳ありません。」
私がそう答えると、うんうんと頷きながら神父様が答える
「そうか、よかった。お父様からうかがったのだけど記憶がないらしいじゃないか。なにか思い出せるお手伝いでもできればいいのだが。」
「私自身も今混乱していまして。昔の私‥今までの私のことをお話しうかがうだけで十分です」
そう伝えると神父様は考えながら話し始めた。
「どこから話始めようかねえ‥」




