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第十八話 川島さんの、えっち

 私は「錆色の~」シリーズの原作主人公さんとラスボスさんのハウスを昔から両方知っています。

 というか、前は結構な頻度で宗二君と善人のアパートを行ったり来たりしていました。

 休みの日とかに宗二君と絵本最強主人公談義を行ったあとに、善人と遠出ってどこからのイメージか討論をするなど下らないことよくやってましたね。


 原作前に最終決戦勃発とならないように私も我ながら上手くやっていましたが、こそこそしていたところを見られて恵にはよく吉見はどっちが本命なのとか問われたことすらあります。

 正直に本命は行方不明ですと返したところ、その気がないならふらふらしちゃダメだよとお小言を頂くことに。

 おかしいですね。私は眼の前のことには大体本気と思っていたのですが。

 とりあえず、以降はふらふらせずに一日ごとに彼らの家で遊んだりごろごろしたり、あとちょっとシリアスなお話をしたりしていたのでした。


「しかし、よく考えると宗二君ハウスに来るのは少しぶりな気がしますね……」

「えっと。……仲良しなんだよね?」

「ええ! それはもちろん!」


 私がひいこらアパートの階段をのぼる道中の独り言は、今は私と一緒な玲奈さんに拾われます。

 彼女はこれから訪問する相手と私の仲が良好という情報が正しいか不安になったようですが、しかし実際登校時など普通に顔合わせますしメッセージアプリで唐突にしりとりを仕掛けてみたりする仲には違いありません。

 しかし、ちょっと玲奈さんの端正なお顔は不安げです。どうしたらその緊張から元のもちもちお顔に戻っていただけるか私は少し困りましたが、よく考えたら証を示せばいいのだと気づきます。

 口頭でも理解が及ぶくらいならばそれは相当のものが必要で、ならばと私はとびきりを口にします。


「そうですね……端的に申しますと、私と宗二君は共にお風呂でお背中を流しあった仲なのですよ! ふふー。まるで姉弟みたいでしょう?」


 そう。最近は原作近いし接触を控えていましたが、実のところ宗二君とはズッ友です。

 いや、原作が子供向けだからかは分からなかったのですが、何か大事なところはいつも謎の光か泡泡で伺えませんでしたが、思えば懐かしいですね。

 昔の宗二君はめちゃ暗で無気力でやられたい放題だった上お風呂嫌いだったので、彼が汚くなる前によく私がお風呂に入れてあげていました。

 わしゃわしゃ背中洗って、お返しにゴシゴシしてもらうの好きだったのですが、何時からでしょうか宗二君は自分でお風呂に入るようになったのですよね。


 その分私はわらびをお風呂で可愛がることを楽しむようになるのですが、しかしあの子も思春期の訪れとともに嫌がるように。

 よく分かんないのですが私の裸ってそんなに刺激が強いものなのですかね。ぶっちゃけ、わらびの脅威の胸囲の方が服をまとっていようとも余程R指定ものと思わずにいられませんが。


 そんな風に考えている私は自分の発言に幼少期と入れることを忘れていたことに気付かず、そのため玲奈さんが顔を赤くした理由も不明でした。

 故に彼女の明白な問いに私はちんぷんかんぷんを返す他にありません。


「え……川島さんって女の子……だよね?」

「勿論です! ご覧の通りに私の性徴はどうにもシャイな奴でして……寝ている時に妹に水準器を置かれて本当に真っ平らだ、とか叫ばれたりしたこともありますが、しかし私は今は女性です」

「……今は?」

「いえ。ちょっと変なことを口にしてしまいましたが、間違いなく川島吉見は生まれてからずっと女の子をやっていますよ? 何故か女子に告白される率の方が高めですが」

「そう……なんだか怪しげだけど、それならあまり異性とそういった……裸の付き合いってしちゃいけないと思うの」

「ですか……」


 急にお顔真っ赤っ赤な玲奈さんにシリアストーンで叱られて、少し私もしょんぼりします。

 いや、この方原作だとよく培養カプセルに裸で入れられてた時代を回想されてる何ともなサービスガールだったりするのですが、まさかそんな彼女に裸はダメだと叱られるとは。


 予定はないですが、このままだともし宗二君と次一緒する時は着衣でとなりそうですね。いや、普通の服だとべちゃべちゃな風になりそうですから水着でが良さそうです。

 となると、事前準備が大事ですね。私でも流石にスクール水着は体を洗える面積的にナンセンスだとは分かります。

 しかし普段プールに入れば顔が真っ逆さまに底につく私は、水遊びの経験が少なくビキニスタイル等の水着を購入したこともないので、これは新規購入ですね。

 すると、私は先に逃げてきたばかりで衣服の用意もろくにないだろう玲奈さんのことも気になりました。どうせならばと、宗二君ハウスであるニーマルサンの手前でこう提案します。


「玲奈さん……なら後で一緒に水着買いましょうか? 私が選んであげます!」

「……川島さん、ひょっとして私に狙いをつけてる?」

「はい? それは勿論玲奈さんと(買い物)一緒したいと思ってはいますが……」

「うう……そんなにわたしと一緒に(えっちなこと)したいなんて……」

「そんなの、今どきの女子だとふつーですよ」

「そんなの、普通じゃなくて不潔!」

「あれー?」


 しかし、なんだか玲奈さんとのお話が合いません。

 同性のショッピングすら不潔と捉えるなんて、何とも玲奈さんは潔癖です。

 ですが、よく考えたらこの子はずっと一人ぼっちでこれまで生きてこられた無垢そのもの。

 それを思うと、なるほど誰かと一緒に何かをするというのが存外彼女にとってはハードルが高いものなのかもしれません。

 私はしかし、少し意地になって言い募ります。


「大丈夫ですよ! 手取り足取り私が(買い物の)やり方教えますので!」

「(えっちなことの)やり方を教える!?」


 あれ。どうしてか玲奈さん私から一歩下がりましたね。

 私は首を傾げますが、しかし彼女はそれにむしろ更に顔を紅に染め上げるばかり。

 よく分からないのですが、ここまで変調するなんて実は彼女何やら体調が悪くなっているのかもしれません。


「玲奈さん?」

「うう……」


 気になり私が一歩。すると彼女はじりと下がりました。半目で涙目で、玲奈さんちょっと可哀想です。

 やれ、これが続けば埒が明きませんね。仕方ないので、私は彼女を安心させるためにこう提案し直すのです。


「分かりました……それなら」

「……それなら?」


「宗二君も一緒ならいかがです?」

「っ!」


 そう。一人じゃダメなら、二人。私一人では不安があっても手取り足取り彼と一緒なら。

 これはヒーローとヒロインの好感度アップにも繋がる一石二鳥の良案だと確信した私は勝利も間違いないと頷きます。


 すると、どうしてだか私の無駄に悪役的になった顔に一度ひっとした玲奈さんは。



「川島さんの、えっちー!」

「え?」


 そんなよく分かんないことを叫んだのでした。

 エッチって、私別にビーもないのですがねえ、と現実逃避。


 すると、部屋の前でここまで騒いだからには当然のように主が現れて。


「えっと……吉見と……誰だろ。とりあえず、君等あんまり家の前で騒がないでくれると助かる」

「あ、そうでしたね……失礼しました」

「君も、吉見が何か変なこと言ったのかもしれないけど……」

「うう……エッチが増えた」

「え? どうして初対面のオレも変態警戒対象?」


 そして、しばらく玲奈さんの誤解が解消するまで、しばらく渡り廊下で繋がらない会話は続いたのでした。




「ふぅ……」


 時間はそこそこゆっくり進みます。

 私が勘違いに頭を抱える玲奈さんを連れて宗二君ハウスに入ってからもう三十分程度。

 すると、ある程度会話も時と同じく進むもの。とはいえ混みいった自己紹介が今やっと終わった程度でしょうか。

 実際、私が補足しましたが秘された事実が折り重なって玲奈さんの境遇は相当にややこしい。

 彼女がペットボトルの緑茶で喉を湿らせたタイミングで、理解した彼は休みで何もしてなかったという割には奔放に整いすぎた主人公ヘアを撫でつつこう呟きました。


「はぁ……君はイザナミの研究によって生まれた……つまりは俺と同遇ってわけか」

「ですねぇ……」

「えっと、貴方が私と、同じ?」


 少し緊張した様子ながらも、玲奈さんはその言に素直に首を傾げます。

 私そういえば全然言ってませんでしたが、元々《《だからこそ》》彼女は彼と仲良くなる一番のヒロインであるのですよね。

 運命ってやつですかねえ、と訳知り顔の私を他所に二人の会話は続きます。


「まあ、だからこそ真っ先に吉見が君を俺のもとに連れてきたのだと思うけど……うん。俺はまた違うプロジェクト関連だけど、同じく試験管が母体だよ」

「っ!」


 それを聞き、悲しいと心を表情に出す優しい子。玲奈さんはあまりに擦れを知りませんね。

 しかし、その優しさを今更と気にもとめない宗二君はまた、擦れ過ぎです。

 私は、何となく二人に気休めにでもなればと、告げたくなりました。私は下唇をきゅっと噛んでからこう話し出します。


「――――ただ、あなた達の違いが発端だけであれば、熱を持つ今を生きる者である方こそが間違いない」

「川島さん?」

「私は思います。そして、あなた達も思うでしょう。ならば、思い合える」

「そう、かもね」

「ええ。だから私はあなた達がどんな形であっても生まれてきてくれたことが、とても嬉しいのですよ」

「あ……」


 生じる。そうしたらそれを一生に続けなければなりません。

 そして人は一人では生きれずにこの世は異見をぶつかり合わせるばかりでなければ、心重ね合ってみたって良い。

 辛さ、虚しさ。そんなの仕方ないでしょう。でも、それを含めて私は知っているから愛したい。


「ふふ……知ったようなこと、すみませんね」


 ただそんな思いだけの私はだから、はにかむばかりなのです。


「ううん……ありがとう」


 でも、それでも優しい人達は私の無能に意味を見出し大切にしてくれる。

 その愛おしさといったらまたないのですが、しかしとりあえず目の前の彼女は私に感謝してくれました。

 ああ、そんなに目尻に涙を貯めないでと思いますが、それが流れる前に真ん前の彼がこう言います。


「だな。で、俺はどうすればいい?」

「海山、君?」

「違うな……吉見。俺はどうすれば鶴三の助けになれるか、教えてくれ」


 そして、私の全知を信じる宗二君は、私に教えを請いまでしてくれました。

 なんとも、それは嬉しいことです。私は姉弟みたいと口にしましたが真実彼はそのように思ってくれていたのかもしれませんね。


「そうですね……一番手っ取り早いのは……」


 私は、原作知識を元に、こう彼に先を示唆するのでした。



「お布団の中でお二人一緒になってちゅーすることですかね?」

「はあ?」


 それは、彼が戦いに弱った時に、身を寄せ合って熱を伝える彼女と彼の同期。

 それこそが悪を挫く発端たる絆の証である筈なのですが。

 いや、しかし実際口にするとちょっといやらしい感じでしたでしょうか。



「川島さんの、えっちー!」

「わ」


 当然、怒りと照れでお顔を前以上にした玲奈さんは私にそう叫ぶのでした。

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