コノハという少女
「異世界ってなに?」
ふわりと僕の思考に入り込んできた声。
ーーーきっと目の前の彼女のものだ。
視線が合うと柔らかく笑みを浮かべる。
「ーー多分なんですが
あくまで僕の推測でしかないんですが…
僕は、違う世界?から来たみたいです…。」
ーーー完全に不審者だ。
いきなり異世界から来ましたなんて奴。
僕だったら速攻で逃げるし、関わりたくない。
そんな気持ちとは裏腹に
心は唐突な孤独に押しつぶされそうになる。
不安が顔に出ていたのだろう。彼女は困った様に笑っていた。
「そっか。君は独りなんだね。」
そう言って彼女はまた、柔らかく笑う。
拒絶でも、励ましでもない。
突きつけられ現実は、今の僕にはあまりにも残酷な言葉だ。
僕と彼女の間に気まずい沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは、彼女だった。
「私、コノハって言うの!
ーーねぇ、君の名前は?」
「…穂高。
ーー秋月穂高です。」
「そっか…。」と小さく呟いた彼女は、くるりと僕に背を向けた。
ああ。
きっと僕は見捨てられるんだろうな。
なんて、裏切られたみたいで図々しくも凹んでしまう。
コノハと名乗る彼女は顔だけ僕の方へ向けると、まるで悪戯っ子の様にニヤリと笑う。
「ねぇホダカ。
ーー私の恋人になって!」
あまりに突飛で、唐突な言葉が春の疾風の様に吹き抜ける。
それは、僕のキャパシティをとうに越えていた。
ーーー僕は人生初めての強制終了ボタンを押した。