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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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すきま

 部屋に隙間がある。

 ちょっとした隙間。

 本棚の本と本の間にできた隙間。

 ベッドの下。

 机と棚の間。

 そんな、ちょっとした隙間。


 それ自体は当たり前のことだ。

 けど、少女の部屋の隙間は異常だ。


 覗いてくるのだ。


 誰が? いや、何が、か?

 それはわからない。


 そもそも本と本の隙間、その裏側などに誰かが入れるようなスペースがあるわけがない。

 なのに、暗い隙間の奥に人の顔が、にやつく人の顔が見えるのだ。


 少女以外には見えない。

 何度も親に相談したが、少女の親がそんな顔を確認できたことはなかった。

 そもそも、ほとんどの場所が人が潜めるような隙間ではないのだ。


 親は信じてくれない。

 けれど、親を呼べばとりあえずはその隙間から覗いてくる顔も消える。

 だから、少女は顔に気づくと親を呼び続けた。

 最初は親も付き合ってくれていたが、一か月を過ぎたころになると、親もまともに取り合わなくなる。


 少女はこの件に関しては親はあてにならない。

 そう考えた。

 これは自分でどうにかしなければならないことなのだと。


 そこで少女は、手に油性のマーカーペンを持つようにした。

 しかも、そう簡単に消えないように油性のものだ。


 そして、隙間に顔が現れると、そのマーカーペンを突き刺すようにした。

 もしかしたら、マーカーペンのインクが付いて、犯人を特定できるかもしれない。

 幼いながらに少女はそう考えたのだ。


 だが、中々うまくいかない。

 マーカーペンで書き込もうとする前に、隙間から覗き込んでくる顔は闇の中へと去って行ってしまう。


 それでも少女はその行為を続けた。


 そして、ある日、たしかな手ごたえがあった。

 覗いてくる顔にマーカーペンでインクをつけることができたのだ。

 恐らくは左目の下あたりに赤い線を書き残せたはずだ。


 次の日から少女は出会う人の顔を一人ひとり確認する。

 だが、左目の下にそんなインクの跡を残した人物に出会うことはない。


 それからしばらくしてのことだ。

 少女はとうとうその人物を見つける。

 いや、人物ではない。


 それは学校に貼られているポスターだった。

 何かの俳優か政治家か、もしくは有名な先生なのか、少女にはわからなかったが、確かに学校の隅に張られているポスターの左目の下に、少女が持つマーカーペンで書かれた線があったのだ。


 少女は誰もいないことを確かめた後、そのポスターを破り、焼却炉に捨てた。


 それ以降、隙間に顔が現れることはなくなった。





すきま【完】

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