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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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ずつうとかがみ

 頭痛がする。

 女は顔を歪めた。

 頭の内部を叩かれるような、そんな痛みがガンガンと脈打つ。

 普段女は、頭痛持ち、というわけでもない。


 ただ最近仕事が忙しく、少し疲れがたまっているのかもしれない。

 女はそう思っていた。


 仕事が一段落つき、トイレに行った後、手を洗おうとした時だ。

 鏡の前に立った女は気づく。


 自分の頭、頭痛が激しい部分に何かが巻きついていることに。


 ただ物ではない。

 黒い煙のような、靄のような、そんなものが鏡に映った自分の頭部に見えるのだ。

 手で払おうとしても、触れられない。

 ただ空を切るだけだ。

 それでも女は何度もその靄を払おうとする。


 そうしていると同僚がトイレへ入ってくる。

 女は同僚に自分の頭になにかついていないか、と尋ねると、同僚は不思議な顔をして、なにも、と答えた。

 鏡越しにも見てもらったが、同僚には何も見えないようだ。


 女は自分にしか見えない、しかも鏡の中でしか見えないのだと分かった。


 自宅に帰っても、薬を飲んでも頭痛は治らない。

 原因は鏡の中の黒い靄なのだろうと、女は思っていた。


 どうにかできないものか、と女は洗面所の鏡の前で色々と試す。

 塩を頭に振りまいてみたり、銀製のアクセサリーで拭おうとしてみたり、オカルト的なものまで試してみた。

 だがそれでなにか効果が出ることもない。


 最後に女は手鏡を使い、合わせ鏡にする。

 鏡の中に手鏡が映り、手鏡の中に鏡が映り込み、それが永遠に続くように繰り返されている。

 もちろん靄も映りこんでいる。


 すると、突然靄が薄くなる。

 効果があったと、手鏡をどかしても靄は薄いままだし、頭痛も軽くなった。

 どういう原理か、女にはわからない。


 ただ効果があったことだけは事実だ。


 その後、何度か合わせ鏡に黒い靄を写し込ませ、そして、合わせ鏡をやめると黒い靄がより薄くなり、頭痛もなくなっていくことに女は気づいた。

 女は何度も何度も、それを繰り返し頭痛を軽くしていった。


 もうほとんど頭痛を感じない、となった時、女は洗面台の鏡を背にして笑顔で手鏡を覗き込んだ。

 意図せず合わせ鏡になる。

 すると、繰り返される鏡の奥から、ものすごい勢いで黒い靄の塊がきているのが見えた。

 女は急いで手鏡を下げた。


 それ以降、女は合わせ鏡をなるべく作らないようにしている。

 だが、たまに自然と合わせ鏡になっているような場所も存在する。


 そんな場所へと行くと、女は頭痛に苦しむようになった。

 もしかしたら、今も黒い靄に追われているのかもしれない。






ずつうとかがみ【完】

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