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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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なっつ

 男はナッツを買った。

 外国産だが安く量も多い。

 いろんなナッツが入っているミックスナッツだ。


 素焼きであり味気ないが、それだけに食べやすい。

 ただ、アーモンドやカシューナッツよりも、ピーナッツが少し目立つ。

 まあ、値段的にこんなものだろう、と男もそこは納得している。


 ただ稀に大きな三日月型のナッツが入っている。

 ブラジリアンナッツだ。

 とても希少なナッツで格安のミックスナッツに入っていることは稀だ。


 男はそれだけでも買ってよかった。

 そう思っていた。


 男はナッツの袋から、ナッツを小皿に移す。

 その時、今まで見たこともないナッツが袋の中から転がり出てくる。

 栗ほどの大きさで少し透明感がある。

 マカダミアナッツにも思えたが、それにしては少し大きい。


 なにより透き通るような透明感がある。


 何のナッツだろうと考えたが、よく見ると虫食いのナッツだった。

 素焼きしてあるので虫はもう死んでいるだろう。

 だが、虫食いの穴が、うっすらと綺麗に透き通っているために茶色く透けて見えるのだ。

 よく見ると、幼虫の姿もかすかに見える気がする。


 知らずに口に入れてしまうならまだしも、こうあからさまに見えていると躊躇してしまう。


 男が悩んでいると、ナッツの中の虫が動いているように見えた。

 驚いて男は、ナッツの袋を確認する。

 そこにはちゃんと素焼きと書かれている。


 男はやっぱり外国産は信用できない、などと思いつつ、正体の分からないナッツを手で割ってみる。

 それほど固くなく、ナッツは簡単に割れる。

 そして中から幼虫が一匹、もぞもぞと動きながら出てくる。


 やはり生きている。


 何の幼虫だろう、と男は幼虫の顔をよく見ようとする。

 そして、それに気が付いてしまう。


 小さくはあった。

 一センチもないほどだ。

 髪などはなかった。

 だけども、それは人の顔をしていた。


 幼虫の頭部に、人の顔がついていた。


 男が驚いて、目をひん剥いていると、その幼虫が男を見上げる。

 そして、小さい声で、蚊の鳴くような声で言うのだ。


 タベレバヨカッタノニ。


 と、笑う。

 その時、男は恐怖よりも先に気づいてしまう。

 幼虫の顔が自分の顔であることに。


 髪の毛がなかったのですぐには気づけなかったが、あれは確かに自分の顔だ。

 男がそう思って狼狽えていると、その幼虫は男の視界から消えていた。


 ただ男の目の前には、虫食いで正体不明のナッツだけが残されていた。







なっつ【完】

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