あめ
家のリビングにガラスの小物入れがあり、その中に個包装の飴がいくつか入っていた。
少年は家にこんなものがあったかな、と思いつつ飴を一つ取る。
袋になっている飴ではなく、紙で包んで両端をねじり、リボンのようになっている、そんな飴だ。
少年は飴の両端を引っ張り、包装を解く。
中から白い飴が出てくる。
乳白色ではなく、少し青みがかった、そんな飴だ。
少年がそれを指でつまんで、じっと見る。
青白い色がどこか綺麗で、それでいて不気味だった。
それでいて、どこかなじみのある色だ。
ただ、あまり飴で見るような色合いではない。
ミントなどのハーブ系の飴なのかな、と少年がそう思い、飴をクルリと回した時だ。
目が合う。
飴と目が合う。
いや、飴が目玉だったのだ。
それも違う、目玉のような飴だった、これが正しい。
青白い色は目玉の白目の色だったのだ。
目玉にしたら小さい。大きさが違う。
だけれども妙にリアルだ。
本当に飴なのかもわからない、それほど精巧に作られている。
特に瞳の虹彩は異様なほどリアルだ。
少年が不思議そうに目玉のような飴を見ていると、太陽が雲に隠れたのか、窓から入り込む日光が急に弱まりリビングが暗くなる。
すると飴のはずの、飴の模様のはずの瞳、その瞳孔がゆっくりと大きく開き始める。
目の錯覚かと、少年は思ったが、何度見ても瞳は動いている。
少年は慌ててリビングの電気をつけ、周囲を明るくすると、また瞳孔がゆっくりと元に戻り始めたのだ。
ただの飴ではない。
いや、飴ですらない。
少年は飴を包装紙で包み直す。
それをガラスの小物入れに戻す。
そして、ガラスの小物入れ自体をセロハンテープで止め、開かなくする。
親が帰ってきたら目玉の飴のことを報告せねば、そう思っていたのだが、目玉の飴はガラスの小物入れごと、いつの間にか消えていた。
その夜、少年は夢を見る。
無表情な作業着を着た男性に、たくさんの子供たちの目がくり抜かれ、煮込まれ、目玉が飴になっていく夢を。
もし自分もあの飴を舐めていたら、自分もそうなっていたに違いないと、あの飴を舐めなくてよかったと、少年は心の底から思った。
あめ【完】




