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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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はだし

 ペタペタペタ、誰かが裸足で歩き回る音がする。

 男は昼寝を切り上げて、寝床から起き上がり、家の中を見回す。

 盗まれて困るものはないが、それでも、泥棒をそのままにするつもりはない。


 だが、男の部屋の中には男以外、誰もいない。


 男が借りている部屋はそれほど広くはない。

 誰もいないのはすぐに分かった。


 では、あの足音はなんだったのか。

 隣の部屋の壁は厚くはないが、さすがにペタペタペタだなんて足音は聞こえてくるわけもない。

 男がそう思っていると、フローリングの床に、小さな、子供くらいの白い足跡が見えた。

 湿気で足跡ができているのか、男の見ている前で、その足跡は乾くように消えていった。

 それで男もついさっきまで何者かがこの部屋の中にいた、と気づく。


 男は本格的に寝床から起き上がり、部屋の中をくまなく見て回る。

 だが、やはり部屋の中に誰もいない。


 では、あの白い湿った足跡はなんだったのか。

 男は考える。

 自然と男の視線は床に向かう。


 すると見つけてしまう。


 男の目の前に、小さな白い足跡が二つ、並んでいるのを。

 その瞬間、男も理解する。

 目の前に、何かがいるということに。


 男の顔に生暖かい湿った風が吹きかけられる。

 色んなものが混ざり合い腐ったような、そんな臭いがする。


 その臭いにあてられて、男が反射的に鼻と口を押さえる。

 それほどまでに男に吹きかけられた息は臭い。


 息。


 確かに男は顔に吹きかけられた湿った物が、男にはそう思えた。

 そして、やはり今自分の前に見えない何者かがいるのだと、男は確信した。

 男は恐怖で震え出す。床に残っている白い湿った足跡を見ることしか男にはできない。


 ただ足跡を見つめ、ガタガタと震え、何もできない。

 しばらく男が震えながら固まっていると、スッと乾くように足跡が消える。


 目の前にいた何者かが去っていったのだろうか。


 それ以降も、男の借りている部屋では、たまにペタペタペタと裸足で歩き回る足音がする。

 そして、稀にあの腐ったような臭い息を吐きつけられるのだ。


 早くこの部屋から引っ越したかったが、男はそう思っていても金がない。








はだし【完】

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