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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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ベランダ

 女は少し擦れた社会人だ。

 もう会社に勤めだして十年近く立つ。


 女が家に帰ってくる。

 何の変哲もないマンションの一室だ。

 そこに一人で住んでいる。

 家に帰ってまずやることがある。


 手を洗うこと? うがいをすること? 化粧を落とすこと?

 それらは違う。

 まずはベランダの雨戸を閉めることだ。


 女は急いでベランダのカーテンをめくる。

 今日は遅かった。


 奴が既にいる。


 白い人型の何か。

 それが窓に張り付くように居る。

 カーテンを閉める。

 流石にこれがいる状態で窓を開ける気にはなれない。


 白い人型のなにかはだいたい夜の八時から九時頃に女の部屋の窓のへばりつく。

 雨の日も、風の日も、窓にへばりついている。

 それより前に雨戸を閉めたかったのだが、今日は遅かったようだ。


 女はため息をついてカーテンを閉める。

 こうしてしまえば、よくわからないアレを見ないで済む。

 特に何かしてくるわけではない。

 ただ窓にへばりついているだけだ。

 目も口もない。

 白い人型の何かが。

 ガラス越しに見るそれは少しお餅のようにすら思える。


 はじめこそ怖かったが、引っ越ししたばかりで、金も暇もない。

 仕方なく放置していたら、意外と慣れてしまった。

 それでも、窓のあの白い人型がへばりついているときは窓を開ける気にはなれなかったが。


 女は余暇を過ごし寝る時間となりリビングの電気を消す。

 うっすらとカーテンに人型の影が見る。


 女はそれを見なかったことにして寝室へと向かう。


 それから、しばらくしてからだ。

 ベランダのほうから男の悲鳴が聞こえる。


 女が起きてリビングのカーテンを開けると、見知らぬ男が気絶でもするように倒れていた。

 ここは三階だというのに登ってでも来たのだろうか。

 それと、白い人影はいない。


 とりあえず女は警察に通報した。


 男は女にとって最悪の犯罪者だった。

 それを聞いた女は、あの白いのも役に立つものだ、と一瞬考えたが、あれがいなければそもそも雨戸を閉めておけたのだと思いなおした。

 

 女の部屋には、今日も白い人型のなにかが窓のへばりついている。




ベランダ【完】

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