まねきん
少年が学校から帰る途中、道の真ん中にマネキンが立っていた。
ゴミ捨て場などではない。
普通の住宅地の道、その真ん中に立っていたのだ。
何といったらいいか、とにかく違和感や異物感というものが強い。
とにかく場違いな、そんな感じが強かった。
なんでこんな場所にマネキンが、と少年は思いそのマネキンに近寄る。
特にマネキン自体に変わったところはない。
顔まであるタイプのマネキンで女性型のマネキンだ。
顔はあるが表情はない。
目も鼻も口もない。
マネキンは自立しているわけでなく台の上から伸びる棒で支えられている。
マネキン自体は宙に浮いているともいえる。
台に車輪がついているわけでもない。
誰かがここまで運んで来たのだろうが、道の真ん中に置くなど邪魔でしかない。
しばらく少年はマネキンを観察したのち、不気味だな、という感想を抱くだけだった。
そして、マネキンを通り過ぎて、道を進む。
ある程度進んだところで、ガガガガッ、と何かがこすれる音がする。
少年が振り返ると、マネキンが揺れていた。
いや、揺れているだけでない。
明らかにマネキンの向きが変わっている。
少年の方を向いているのだ。
マネキンの向きが変わる程、強い風も吹いていない。
少年はマネキンを見つめたまま、後ずさりを始める。
そのまま、マネキンを見つめたまま、ある程度、後ずさりで距離を取る。
距離を取ったところで、少年は振り返り、そして全力で走りだす。
ガガガガッ、とまた何かがこすれる音が断続的に聞こえて来る。
曲がり角まで走った少年は息を切らしつつ振り返る。
だが、そこにはもうマネキンは見えない。
少年が何だったんだ、とそう思い前を向いた時だ。
ほんの五メートルほど先に、道の真ん中に先ほどのマネキンが立っているのだ。
少年は悲鳴を上げる。
そして、恐怖で暴走した少年はマネキンに襲い掛かり、マネキンを押し倒し、蹴っ飛ばし、道を走る。
息を切らしながらも走り続け、少年は自宅までたどり着く。
その時振り返るがマネキンはもういない。
振り返りなおしてもマネキンが現れることもない。
それで安心して少年は家に入る。
だが、それから少年の家の近くで妙な噂が流れ始める。
少年の家の近くでマネキンを見た、という噂が流れ始めたのだ。
今もマネキンは少年の家を探しているのかもしれない。
まねきん【完】




