あくまのしわざ
少年が公園に行くと、子供の人だかりができていた。
その中心には中年の男が座り込んでいる。
そして、そこから子供たちの歓声が上がっている。
少年は手品でもやっているのかと、そう思い人だかりに参加していく。
人だかりの中心、中年の男はやはり手品、それに似たようなことをしていた。
まず子供の一人が中年の男に百円を渡す。
中年の男は渡された百円を右手で強く握る。
握った手を開くと、そこには千円札が現れるのだ。
それで歓声が上がっている。
その千円札を百円を渡した子供の返すのだ。
十倍の金額になっている。
千円札を渡された子供は大喜びだ。
別の子供が今度は十円を中年の男に渡す。
さっきと同じことをして、十円が百円になる。
その百円を十円を渡してきた子供に返すのだ。
中年の男がお金を強く握ると、やはり十倍の価値になるようなのだ。
しかもそれを返却している。
無償でお金を配っているようにも見えるのだがかなりの子供たちがその中年の男の周りには集まっている。
一人一人は少額だが、それでもかなりの人数で、もしその中年の男が自腹を切っているのであれば、かなりの金額になっていそうだ。
中年の男が少年に向かい、笑顔で右手を差し出す。
今度は少年の番ということのようだ。
しかし、少年はその時一円も持っていなかった。
少年は残念そうにお金を持っていないと、中年の男に伝える。
すると中年の男は、ハハハハッと声をあげて笑う。
中年の男は少年の方を向き、おまえは運がいい。他の者は金ごときで寿命を売らなかったのだからな、と、そう言って立ち上がり、呆然とする子供たちを後に悠々と去って行ってしまった。
その中年の男はもう二度とその公園に現れることはなかった。
その後、本当にその子供たちの寿命が減ったのかどうか、それを確かめる術はない。
ただ、その少年だけは長生きだったことだけは確かだ。
あくまのしわざ【完】




