やま
少年は家の中にいた。
今日一日は一歩も家から出てはいけない。
そうきつく言われていたからだ。
小学校すら、今日は行かなくていい。
だから、今日は、明日の日の出まで、一歩も家を出るな、部屋に籠っていろ、雨戸も開けるな、部屋の中で好きなだけゲームをしていていいから、そう言われた。
少年は好きなだけゲームをしていいと言われて、目を輝かせる。
言われた通り、雨戸も開けずになるべく部屋から一歩も出ないで、なるべくトイレも行かず朝からずっと部屋の中でゲームをしていた。
雨戸を開けてないせいか、時計を見なければ時間の間隔もよくわからない。
朝食も昼食も少年の部屋に運ばれてくる。
王様にでもなったような気分で過ごしていた。
朝からゲームをしていた少年はさすがに飽きてくる。
夕食はまだ運ばれて来ていない。
だが、そろそろお腹がすいてきた、というところで、雨戸をコンコンと叩かれる。
もしかしたら、友人が遊びに来たのかもしれない。
少年は、誰? と雨戸に向かい声を掛ける。
そうすると返事をするように、また雨戸をコンコンと叩かれる。
少年は今日、学校に行かなかった自分を心配して、友人が遊びに来てからかっているのだと、そう考えた。
少年は雨戸に向かい、誰だよ、と再び声を掛ける。
すると、バァンバァンと大きく雨戸を叩かれ、アケロ、とドスの効いた声を掛けられる。
その声を聞いた瞬間、少年はゾクゾクした物を感じ、急に怖くなる。
その恐怖に呼応するように、雨戸を強くバァンバァンと外にいる存在は叩き始めた。
少年が恐怖で雨戸の前に立ちすくんでいると、母親が部屋に入り込んできて少年を抱き寄せて、お経のようなものを唱え始める。
するとすぐに雨戸を叩く音が聞こえなくなる。
母親がすぐに父親を呼び、少年の部屋に母親と父親、それと祖父と祖母も集まってくる。
少年は布団に無理やり寝かされ、そして、父親、母親、祖父、祖母の四人でその布団を囲み、朝までその状態が続いた。
少年はいつの間にか寝てしまい、朝起きると四人はいなくなっていた。
恐る恐る少年は部屋の戸を開けると、そこには父が壁にもたれかかりつつ寝ていた。
少年は父親を起こし、何があったのか聞く。
父親は、少年に起こされると、もう朝か、今日は学校行けよ、と言われる。
少年はそんなことよりも気になっていたので、昨日何が起きていたのかを聞こうとする。
そして、なんで四人で布団を囲んでいたの? と少年が聞くと、父親の顔が一気に真っ青になった。
少年はその日のうちに遠くに住む親戚の家へと送られ、大人になるまでこの家には戻って来てはならない、そう言われた。
少年は何度も理由を聞いたが、山が、山からやって来てしまう、と、父も母もそれを繰り返すだけだった。
故郷に帰るのを少年が許されたのは、少年が結婚した後になってからだ。
やま【完】




