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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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てがみ

 男は仕事の合間を見て、実家へと戻って来ていた。

 働いている業種の関係から、正月の期間が忙しく実家に顔を出せていなかったのを、今頃になって訪ねた、というわけだ。


 両親に一通り歓迎され、まだ結婚しないのか、などの男には答えづらい質問をされた後、自室へと戻って来ていた。

 実家の自室は男が家を出た時とそう変わりはない。


 既に実家は父と母しか住んでおらず、部屋が余っているので、そのまま放置されていたからだ。

 ただ掃除はよくされているようで、埃などが溜まっていることもない。


 男は机の前の椅子に座り一息つく。

 何の気もなしに机の引き出しを開けると、見覚えのある封筒が目についた。


 封筒の中身は男自身が書いた手紙のはずだ。

 だが、それが机の中にあるわけはない。


 この手紙は男の親友、いや、悪友ともいうべき友人へと宛てたものだ。

 その友人はもうこの世にはいない。

 男が大学へ行くために、地元を離れている間に病気で死んだのだ。

 その葬式の際に、棺桶の中に入れた手紙、その封筒だ。

 忘れるわけもない。


 火葬場で友人と共に燃えるはずの封筒だ。

 ただ、封筒自体はよくあるものだ。

 似た封筒なのだと思い、男はその封筒を手に取る。


 中に何かが入っている。

 それを出すと、中身は手紙だった。


 一言一句、男が死んだ友人へと向けて書いた手紙で間違いはない。

 筆跡ももちろん男のものだ。


 男は、なんでこれがこんな場所に、と思う。

 確かに、男はお通夜、告別式には参加したが、火葬場まではついていかなかった。


 もしかしたら、何らかの理由で火葬する前にこの封筒は取り出され、差出人である自分の元へと届けられたのかもしれない。


 男は十数年前に自分で書いた手紙を読む。

 死ぬのは早すぎる、もっと一緒に遊びたかった、そのようなことが青臭い文章で綴られている。

 男は感傷的になり、友人を懐かしみながら、手紙を大事に封筒に戻し、机の中に大事にしまった。


 その夜、男は夢を見る。

 真っ暗な中で目を覚ます。

 とても息苦しい。体は全く動かない。何より寒い。とても寒い。

 そうしていると、急に周囲が明るくなる。

 周囲からはものすごい勢いで炎が噴き出てくる。

 叫び声も上げられずに全身が焼かれていく。


 そんな夢だ。

 男が叫び声を上げて目覚めると、まだ深夜のままだった。

 そのまま寝床から飛び起きた男は、すぐに机の中のあの封筒を探す。

 だが、引き出しの中へ大事にしまい込んだはずの封筒はどこにも見当たらない。


 それから、男は夢に見るようになる。

 真っ暗でじめじめとした寒い場所にいて、自分はそこから動けずにすべてが恨めしそうに地上を見上げている。

 そんな夢を。


 その夢を見るたびに、男は友人の好物をもって墓参りをする。

 友人が寂しがっているとそう感じるからだ。

 ただ少し男が気になるのは、その夢を見る周期が段々狭くなってきていることだ。


 あの手紙は何もできない友人が男に向けて出した手紙だったのかもしれない。





てがみ【完】

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