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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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まどのそと

 夕方。

 窓から見える景色が茜色に染まっていくような時間帯。

 少女が雨戸を閉めようとすると、黒い人影が窓から少女を見ていた。


 少女は驚いて短く悲鳴をあげるが、それが人ではないとすぐに気づき、少しだけ落ち着きを取り戻す。

 無論、幽霊や怪異といった存在でもない。


 窓から少女の部屋を覗いていたのは案山子だ。


 田んぼや畑で使われているような案山子が少女の部屋の窓に立てかけられていたのだ。

 少女が住んでいる場所は田舎なので案山子自体は珍しくない。


 偶然か誰かのいたずらか、少女の部屋の窓に案山子が立てかけられていたのだ。

 そこそこ案山子に慣れ親しんでいる少女は驚きはしたものの、人影が案山子だと気づき、落ち着きを取り戻したというわけだ。


 少女は誰が自分の部屋の窓に案山子を立てかけたんだ、と怒りをあらわにする。

 案山子を詳しく調べれば、その特徴からどこの案山子かわかるかも、と思った少女は窓に近寄った時、違和感に気づく。


 案山子は立てかけられていたわけではなく、自立していたのだ。


 とはいえ、それ自体はおかしいことではない。

 だが、少女はどこか言い知れぬ不気味さを窓の外の案山子から感じていた。

 怖気づいた少女は窓を開けていいものかどうか迷う。


 だが、所詮は案山子だ。

 それに雨戸は閉めないとならない。

 少女は思い切って窓を開ける。


 すると、冷たくも湿気を含んだ嫌な空気が部屋に入ってくる。

 少女は案山子を観察するのをやめて、すぐに雨戸を閉めようとした。

 雨戸に手を伸ばしたその時だ。


 少女の手を案山子に、物干しざおに軍手をつけただけの手に掴まれたのだ。


 あまりのことに少女の脳はそれを理解できなかった。

 少しの間をおいて、案山子が勝手に動き、中身のない軍手に自分の腕をつかまれたことを理解する。

 理解した瞬間、少女は大きく叫び腕を引っ込めようとする。

 だが、中身がないはずの軍手はとても力強く逆に窓の外へと引っ張られてしまうほどだ。


 少女は悲鳴をあげ続け、案山子に引っ張られないように抵抗する。

 すると、少女の部屋のドアが開き、母親が心配して入ってくる。


 母親からは少女が窓から身を乗り出しているように見え、何をしているの? と少女に声をかける。

 その時には、案山子は初めからいなかったように跡形もなく消え去っていた。


 ただ少女の腕にはしっかりと手跡だけが残されていた。


 それ以来、少女は窓の雨戸だけは開けなくなった。

 次に案山子に襲われたら助からない、そんな気がしていたからだ。





まどのそと【完】

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