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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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きり

 その日、朝早いせいか霧に覆われていた。

 少し先は真っ白で何も見えない。

 本当に濃霧という奴だ。


 霧の中を歩くとその湿った空気を感じることが出来るほど濃い霧だ。


 少女はそんな中で自転車を漕いでいた。

 部活の朝練に出なければならないからだ。

 こんな濃霧なのだから、多少遅れたからと言って先輩や顧問の先生が何か言うわけではないのだが真面目な彼女は遅刻したくなかったのだ。

 

 少女は濃い霧の中を自転車で滑るように走る。


 普段通いなれた通学路が濃い霧のせいでとても幻想的だ。

 

 横断歩道で少女は自転車を止める。

 信号機が見えないわけではないが少し見難い。

 ただ赤信号か青信号か、それがわからない程ではない。

 それに今はまだ朝の早い時間だ。

 交通量もまだ少ない。


 とはいえ、これほどの濃霧だ。

 少女は車が来てないことをちゃんと確認してから横断歩道を渡ろうとした。


 そんな少女のほんの少し先を黒い車が凄い勢いで通り過ぎる。

 危うく引かれるところだった。


 車は少女の少し先で止まり、運転席から人が降りて来る。

 霧のせいか黒い影に見える。


 それ以前に、こんな濃い霧の中、横断歩道のすぐ先の道のど真ん中に車を止めておいて平気なのかと少女は思う。

 だが、少しおかしい。

 車から降りた人影は、少女には近づいて来ないで、その場で手を振り「おーい」と声をかけている。

 少女がそれに気づくとその人影は「こっちだよ」と声をかける。

 なにがこっちなのかと少女は思い横断歩道の上で立ち止まる。。

 そして、人影が「もうすぐ」と声をかけたとき、少女はハッと気が付き横断歩道を急いで引き返す。


 少女が横断歩道を引き返した直後、今さっきまで少女がいた場所をトラックが通り過ぎていった。

 危うくそのトラックに引かれるところだった。

 少女がなぜそのトラックに気づけたか少女にもわからない。


 そして、横断歩道の先に止まっていたはずの黒い車も人影も今はない。

 元から存在してなかったかのように何もない。


 少女は朝練に出ることを諦め、家に自転車を手で押して歩いて帰った。




きり【完】

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