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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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ひとかげ

 女が仕事帰りに通る道に郊外を通る箇所がある。

 そんなに広くはないが、ちょっとした田んぼがある様な、そんな場所を通る。


 通ると言っても五分程度、田んぼの横を歩くだけのような、そんな帰り道だ。

 街灯もなく、近くの民家の明かりだけが頼りの道。

 舗装もされてない土がむき出しの道。

 そんな道を五分ほど歩いて帰る。


 それほど広くない田んぼの真ん中に人影がある。


 女は知っている。

 あれは案山子だと。

 だから、それほど怖くない。

 が、不気味ではあると思っている。


 こんな場所に立っている人影なのだ、不気味でない訳がない。

 あれがか案山子とわかっていても不気味だ。


 女が仕事帰りにその道を通っていた時だ。

 その人影が普段より近い場所にいるように思えた。

 案山子の位置を変えでもしたのか、と女は思った。

 ただ今は稲も刈り取られた後で水もなければ稲もない。

 案山子の位置を変える意味はないのではないかと、そう女は思ったが深くは考えなかった。


 そんな案山子の人影を横目で見つつ女は歩く。

 ふと何かの気配を感じて、女は田んぼを見つめる。

 

 人影が近づいている。

 目の錯覚ではない。

 間違いなく案山子のはずの人影が自分に近づいてきている。


 女は走り出す。

 家はすぐそこだ。

 すぐに着くと。

 けど、脚が思うように動かない。

 まるで水の中を進んでいるかのように体が重い。

 急いで案山子の人影から逃げとする。もう振り返る余裕もない。

 後、もう一歩で田んぼの道から出れるというところで肩を掴まれる。

 女は反射的に振り返る。


 そこには案山子がいた。


 物言わぬ案山子が物干し竿に軍手をつけられただけの手で女の肩を掴んでいた。

 それで女が悲鳴を上げようとした瞬間だ。


 女の背後でゴォォォォォォォッォオオォォォという強い風が吹く様な音がする。

 女がそちらを向こうとした瞬間、案山子が肩を強くつかみそれを止める。


 音が止む。


 そうすると案山子に掴まれたいた女の肩が解放される。

 案山子から感じていた存在感も消えている。


 そして、音がしていた方、田んぼの出入り口付近の方を女が見ると、そこには大量の黒い大きな鳥の羽のようなものが落ちていた。

 カラスの羽のように黒光りした羽だけが、大量に舞い散っていた。


 案山子がどうしたかったのか女は知らない。

 黒い羽が何なのかも女は知らない。

 それらは知らなくて良い事だ。

 ただ女が命拾いしたことだけは事実だ。


 

 

 

ひとかげ【完】

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