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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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にちようのごご

 女はふと窓から外を見る。

 あいにくの雨だ。

 せっかくの日曜日だが、これでは逆に外出したくはない。


 時間を持て余した女は、自室の窓から外を眺めていた。

 どんよりとした雲と大通りが見える。

 大通りでも雨のせいか人はまばらだ。

 車の通りもそれほど多くはない。


 見ていて楽しい物でもないが、特にしたいこともなければ、何かやる気力も残っていなかった。


 だから、部屋の窓から女は外の景色を、雨が降る様子をただただ眺めていた。

 しばらくそうしていると、今まで聞こえていた雨音が急に聞こえなくなる。

 雨が止んだわけではない。

 なのに、雨音がまるで聞こえなくなる。


 女は自分が目を開けたまま、寝てしまったのではないか、そういった錯覚を起こす。

 そうこうして、頭の働かない、ぼぉーとした様子で女が窓の外に見える大通りを見ていると、おかしなものが視界に映り込んでくる。


 それは黒く大きなフードをかぶったナニカだった。

 それは身長よりも長く細く黒い手を持っていた。

 それは白く幾何学模様なのに、どこか歪んだ模様のある仮面のような物をかぶっていた。


 遠目で見ても身長は二メートル以上はありそうだ。

 単体ではどう見ても人間ではないが、フードの中に肩車をした人が入っていれば、なくはない。。

 女はそんなことを考えていた。


 それは大通りをゆっくり歩いていく。

 他に通行人はいない。

 そんな様子を眺めていると、その黒いフードが仮面のような顔を女の方に向ける。

 仮面のように見えていたのが模様の入った頭蓋骨だったことに女は初めて気づく。

 何かの仮装か、女がそう思っていると、それは女に向かい手を振った。


 女はそれを無視する。

 怖いとかそういった感覚ではなく、ただ手を振り返す気力もなかっただけだ。


 それは女に無視されたことを怒ったのか、車道を横切り女の住むマンションに近づいてきた。

 それによってそれは女の視界から消える。


 それでも女が外を見ながら、ぼぉーとし続けていると、部屋のインターフォンが鳴る。

 女はやっと行動を起こし、インターフォンの画面を見る。

 するとカメラにさっきの仮装した何かが映り込んでいた。


 幾何学模様の入った大きな髑髏の顔をカメラいっぱいに近づけている。


 どうもマンションの入り口で立往生しているらしい。

 試しにインターフォンのマイクを繋げる。


 そうすると聞こえてくる。

 イレテ、イレテ、イレテ、イレテ、と複数の男女様々な声が重なり合って、同じ言葉を何度も繰り返すのだ。

 そこで初めて女も、画面に映っている存在が、超常的なものであるとわかった。

 それでも女はインターフォンの電源を切り、寝ぼけていたんだと、そう思い込み、自室のベッドへと潜り込んでいった。

 布団の中でも、あの幾何学模様の髑髏とイレテという重なり合った奇妙な声が頭の中から離れなかった。


 翌日、マンションの入り口の床には大量の泥がこびりついていたそうだ。


 女は深く考えるのをやめて、このことはこれ以上考えないようにすることにした。

 あれはきっとよくないものなのだから。





にちようのごご【完】

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