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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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さむけ

 深夜、男は異様な寒気で目が覚める。

 寝ているうちに布団がずれてしまっていたようだ。

 男は布団をかぶりなおす。


 そうすると今度は足だけ布団から出てしまった。

 男が寝ぼけた感覚でそう思っていると、足に物凄い寒気を感じる。

 まるで冷や水でもかけられたような、そんな寒気だ。

 それで男の目が一気に覚める。


 仕方がないので布団を足にやる。

 そうすると今度は顔が出てしまう。

 妙な冷気が顔にあたる。


 まるで真冬の外にいるような異様な寒さだ。


 窓でも開きっぱなしにしてしまったか、と男は目を開けようとしたときに、フゥと冷たい息を何者かに吹きかけられた。

 男の背筋がぞくぞくと身震いする。

 男は目を開けるのをやめて反射的に布団を被り込んだ。


 男は布団の中で考える。

 今、息を吹きかけて来たのは何かと。

 何かがいる。

 それも冷たい、身が凍えるほど冷たい何かがだ。

 少なくとも生物ではない。


 生きている者はあんなに冷たい息は吐かない。


 男は布団の中で震えがっていた。

 恐怖もあるが布団の中にまで寒気が、冷気が入り込んできていたからだ。

 布団の中で凍え死ぬ、男がそう考えた瞬間、布団からはみ出ていた足を掴まれた。

 まるで氷のように冷たい何かに、確かに掴まれた。

 それも両足をだ。


 男は反射的に暴れようとするが動けなかった。

 体はぶるぶると震えているのに、自分の意志で動かすことが出来なかった。

 足を掴んだ手が男を引っ張る。

 そんな感じがする。

 ベッドから引きずり降ろされそうな、そんな感覚だ。

 実際に引っ張られているわけではない。

 ただ引っ張られている感覚があるだけなのだ。

 このまま引っ張られ、ベッドの外に出されたら死ぬ、男はそんなことを直感的に感じていた。

 物理的に引っ張られているわけではなく、魂か何か、そんな物が引っ張られているのだと。


 男は何とか動かない体で抵抗を試みる。

 どうにか体を動かそうと暴れる様に無茶苦茶に体を動かそうと試みる。

 そのかいあってか男の体が急に動くようになる。

 勢い余って男は起き上がる。


 目を開けると部屋が少し薄暗い。

 窓から薄暗い明かりが入って来ている。

 やはり窓を開けっぱなしにして寝てしまったようだ。

 そのせいで見た悪夢だったのだろうと、男は考えた。

 窓を閉めるために起き上がり窓まで行くと、外には雨が降っていた。

 男は窓を閉めて、今度は布団の中で丸くなり朝まで震える様にして寝た。


 翌朝、男が窓を開けると部屋中に、まだ濡れたばかり足跡が歩く回るようにいくつも残っていたことに男はゾッとした。





さむけ【完】

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