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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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にんぎょうのひとみ

 女は古い人形を子供のころから大事に持っていた。

 外国の人形で、少し眼が大きく綺麗なガラス玉がはめられている人形だ。

 もうかなりボロボロになってしまってはいるが子供の頃からの思い出が詰まっている人形を女は大人になっても大切にしていた。

 特に人形の眼は今も綺麗で女は今でも宝石のようだと思っていた。


 部屋の掃除をし終え、最後に人形の眼を磨く。

 それがその女にとっての掃除の仕上げだった。

 ただ、最近どうもこの人形の様子がおかしい。

 女は一人暮らしなのだが、この人形の向いている方向が勝手に変わっていることがある。

 特に女の方を見るわけではない。

 部屋の入口、もっと言えば玄関の方を見るような方へと向きが変わっているのだ。


 女も初めは気のせいかと思っていたが頻繁に人形の向きが変わるようになると、女も少し人形のことが不気味に感じ初めてはいた。

 長年使って来た物には霊が宿る、そんな話を女も信じているわけではないが。


 その日も掃除を終え、最後の仕上げに人形の眼を磨いていると、女は気づいた。

 人形の眼に後ろの景色が反射して映りこんでいることに。

 そして、その眼にはちょうどこの部屋の入口のドアが映りこんでいて、半開きになっている。

 半開きになっているドアから何者かが、覗き込んでいるのに、女は気づいてしまう。


 女はびっくりして反射的に人形を投げてしまう。

 そして、振り返り入口のドアの方を見る。

 ドアは人形の眼にには半開きに映りこんでいたはずのドアはちゃんとしまっていた。


 女は投げてしまった人形をもう一度拾い上げ、同じ角度で覗き込む。

 今度は人形の眼に映りこんだ景色でも後ろのドアはちゃんと閉じている。


 見間違えだったのかと、女は人形の眼を磨き、ごめんね、と人形を投げてしまったことを謝りながら元の位置に戻す。


 その後も、度々人形はドアの方を勝手に向くようになる。

 女もだんだんと勝手に動く人形を不気味に感じずにはいられなかった。

 そして、人形の眼を磨いているとき、また閉めたはずのドアが半開きになっておりそこから、誰かがこちらを見ている様子が人形の瞳に映っていた。

 慌てて女が振り返りドアの方を見ると今度は、バタン、と音を立ててドアが閉まった。


 流石に見間違いと言うことはない。

 女は人形が原因だと思い、その人形をすぐに処分してしまった。

 女はそのことを数名に話していたが、それを聞いた一人の友人が「それ、変なのから人形が守ってくれてたんじゃない?」と言った。


 それを聞いた女は顔を真っ青にした。

 確かに人形を処分したはずなのに、女は自室にいるとき誰かの視線を感じる様になっていたからだ。

 人形がいたときは感じなかった視線を。





にんぎょうのひとみ【完】

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