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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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しめわすれ

 今はもう懐かしいリモートワークだった頃の話。

 男は自室のパソコンで仕事をしていた。

 朝、雨戸を開け、カーテンを閉め、仕事に入る。


 仕事が終わればそのまま、パソコンの前で余暇を過ごす。

 そんな生活をしていた。


 カーテンを割と厚い布地の物を使っていたせいだろうか、たまに日が落ちたことに気づかずに雨戸を閉め忘れることがあった。

 

 それは自室で寝る前に部屋の電気を消すまで気づくことはない。

 布団に潜り込んで、しばらくして目が慣れてから、なんだか部屋の中が明るい、と男は気づくのだ。

 大体はそれで慌てて雨戸を閉める。


 だが、その日は寒かった。

 布団から出るのも億劫になるほど寒かった。

 この部屋が一階と言うわけでもない。

 ならば、一日くらい雨戸を閉めなくても平気だろう。

 そう思ってしまった。


 夜中に目が覚める。

 電気を消しているはずなのに部屋が薄明るい。

 そういえば、今日も雨戸を閉め忘れていたと思い出す。

 布団の外は寒い。

 出たくはない。

 そう思っていたが、少し様子がおかしい。

 なんだか部屋の中が騒がしい。騒がしいと言ったら少し違うが、部屋の中がちらちらする。


 男は仕方なく眼を開けて部屋の中を見渡す。

 確かに部屋の中がちらちらしている。

 原因は窓から差し込んでいる月明かりだ。

 それが揺れてちらちらしているのだ。

 男がふと月明かりが差し込んでくる窓の方を見る。


 そこには何かがいた。

 人影のようなものだが、絶対に人ではないなにかだ。

 人間の上半身にあたる部分が葉のない木のように不規則に枝分かれしていて、それがウネウネと動いているかのように見えた。

 それが窓の前で踊るかのようにしているのだ。

 上半身が葉のない樹木、下半身が人間。そんな人影が窓も前に居たのだ。


 男にとって幸運だったのは、それが窓を開けようとしていたわけではないことだ。


 その人影、と呼んでいいのかもわからないが、それは言葉で言い表せはしないが異様だった。

 男は音を立てないようにゆっくりと布団の中へもぐり込み、それが去るの震えながら待った。

 じっとカーテンに映った影を見て待った。


 どれくらいの時間がたったかはわからないが、それは近くを通ったバイクかなにかの音に釣られて、それは去っていった。

 その後も、男はじっとカーテンを見続けた。

 朝まで見続けた。


 それから男は、パソコンのスケジュール帳を使って夕方の四時には必ず雨戸を閉める様にした。




しめわすれ【完】

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