表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
490/491

かいもの

 女はスーパーへ買い物しに来ていた。

 スーパーと言っても四階建てでかなり大きい、今は閉園してしまったが、屋上に小さな遊園地的な物まであったスーパーだ。

 その歴史は長く、言ってしまえばかなり古い建物だ。


 昭和の気配が未だに残る入り口から、女はスーパーに入る。

 中は何度目かのリホームがされていて、かなり綺麗だ。


 だが、女はスーパーに入ったときに、妙な違和感を感じていた。

 生鮮品売り場で色々と食料を買い込んでいた時に気づく。

 他の人がいないのだ。

 違和感の正体はそれだ。


 他の客どころか、定員すらいない。

 レジにすら人はいない。

 セルフレジがあるので会計は問題ない。


 だが、ここまで人が居ないのは妙だ。

 定休日というわけでもないし、店内は明るく電気がついている。

 女は不思議に思いながらも買い物を続ける。


 そうしていると棚の向こうから話し声が聞こえて来る。


 女は、なんだ偶然、人がいなかっただけか、と思い買い物を続ける。

 そして、棚の向こうへと、話し声が聞こえてきた場所へ行くのだが、誰もいない。

 ついさっきまで、何か話していた声が聞こえていたのだが、今は誰もいない。


 女も流石に焦り出す。

 そうするとまた別の方から、ヒソヒソと何かを話す声が聞こえて来る。

 失礼と思いながらも、女は聞き耳を立てる。

 話されている言葉は日本語ではないのか、何を言っているかまるで聞き取れない。


 その事だけはわかった。


 もちろん、話し声の方へ行っても誰もいない。

 女は気味が悪くなり、セルフレジで会計を済ませ、スーパーから急いで出ていく。


 そして家に帰り、買ってきた物を見る。

 すべて、腐っていた。

 何もかもが腐っていた。

 腐らないものも酷く劣化していた。


 女はレシートと腐った食材を持ち、もう一度スーパーへ行く。

 そうすると今度は普通に店員もいる。


 女が店員にレシートを突き付け、文句を言う。

 腐った食材を見て店員も驚くが、レシートを確認して首を捻る。

 そのレシートは五十年も前の物だ。

 このスーパーの建物ができた頃の物だ。


 ただレシート自体は新しいし、このスーパーの物だ。

 店員は困り果てたが、流石にこれでは返金は出来ないと、五十年前の日付のレシートを女に返す。

 女も店員に言われた通りレシートを確認すると、たしかに五十年前の日付だった。


 女は納得できないまでも引き下がるしかなかった。








かいもの【完】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ