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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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あんらくいす

 祖父の家に古い安楽椅子がある。

 祖父も祖母も足腰が悪くなり、使わなくなった安楽椅子だ。

 立ち上がる時に不安定なので使わなくなったのだ言う。

 ただとてもいいものだし、思い入れもあるので居間のスペースにいつでも使えるようにして置かれてはいる。


 少年が祖父の家に遊びに行ったとき、少年だけ留守番をしていた。

 少年を連れて来た父は、重い物を買えなくなった祖父と祖母と共に買い物へ出かけている。

 ただ祖父の家は古いものが多く変わった置物なども多く少年も見ていて飽きない。

 買い物へ行くより、少年は大人しく祖父の家で留守番をすることを選んだ。


 少年は使われなくなった安楽椅子に座る。

 少年は大人しい性格だったので、安楽椅子を大きく揺らすこともなく、その椅子に座り、珍しい見たこともない古い絵本を読んで時間を潰していた。

 

 少年がふと尿意を催し、トレイに行き帰ってくると、安楽椅子が独りでに揺れていた。

 トレイに行くときぶつかりでもしたのかな、とそう思い少年は再び安楽椅子に座り絵本を読み始める。

 しばらくして喉が渇いた少年は飲み物を取りに席を離れる。

 その際はちゃんと安楽椅子をしっかりとめ、それから離れた。


 インスタントコーヒーを淹れ戻ってくると、安楽椅子はまた揺れていた。


 少年は不思議に思い 安楽椅子を手で止めて、しばらく様子を見る。


 初めのうちは止まっていたのだが、しばらくすると安楽椅子は勝手に揺れ始めた。

 ゆっくりとゆっくりと。

 まるで誰かが座っているかのように。


 少年は怖くなり、その場から離れ違う部屋で親と祖父達が帰ってくるのを待った。

 その間も安楽椅子は揺れ続けた。


 祖父達が帰って来る少し前に安楽椅子はゆっくりと止まった。


 その事を少年が、買い物から帰ってきた祖父に伝えると、最近使ってあげてないから、椅子も少年が座ってくれてうれしくなったんだろう、と言った。

 少年はそれを信じて、再び安楽椅子に座る。


 そして、揺られながらまた絵本を読む。


 その時は祖父も一緒にいて何ともなかったが、ちょっと祖父が祖母に呼ばれ席を話した際、安楽椅子の背もたれのほうから「座るな」を低い男の声でそう言われた。

 少年は驚いて椅子から飛び上がってそっちを見るが、誰もいない。

 

 ただ安楽椅子は既に誰かが座っているかのようにゆっくりと揺れていた。





あんらくいす【完】

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