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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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でんわ

 電話が鳴る。

 古い、とても古い黒電話と言われる、そんな電話がまだ残ってる頃の話だ。


 ジリリリリリン、ジリリリリリリン。


 そんな音がする。

 男は受話器を取る。

 もしもし、と声をかけ、相手の出方を待つ。

 返事はない、なにも言ってこない。

 男は、もう一度受話器に向かい、もしもし、と声をかける。

 やはりなにも返事は返ってこない。


 男は、切るよ、と言って受話器を置こうとすると、受話器からモゾモゾと声が聞こえてくる。

 男は慌てて、受話器を耳に当てなおす。


 受話器からは何か聞き取れない、お経ではないが、そんな感じの言葉が聞こえて来た。

 一定のリズムで何かわけのわからない言葉を言っている。

 ただ間違いなくお経の類ではない。

 だとすると外国の人間か、と男は思うが、男に外国の人間の知り合いは居ない。

 間違い国際電話などあるのか、と男は考えるが、これがそうなら実際にかかって来ている。

 外国の方? と男が聞くと、今度はすぐに「違う」と日本語で返ってきた。

 どちら様で何用ですか? と男が聞くと「その家に入りたい、招き入れろ」と返事が返ってきた。

 男が、怪しいと思い、もしもし、ともう一度聞くと電話の相手は黙り込んだ。


 そこで男は昔聞いた話を思い出す。

 電話でもしもしと同じ言葉を繰り返すのは、妖怪物の怪の類が同じ言葉を繰り返せないから、というのを。


 とりあえずいたずらの類であることは間違いがない。

 男は受話器を置き、電話を切る。

 するとすぐに、


 ジリリリリリン、ジリリリリリリン、と電話が鳴る。

 男は電話にでて、もしもし、と声をかける。

 返事はない。

 そこで男は、もし、とだけ声をかける。

 そうすると「その家に入りたい、招き入れろ」とまた返ってきた。

 男はこの電話の相手は人間じゃない、と確信して電話を切る。

 

 そうするとすぐに、 ジリリリリリン、ジリリリリリリンと電話が鳴る。

 男は電話を取らずに、仏間へと走る。

 そこにあるラジカセととあるカセットテープを持ってかえってきて電話にでる。

 もしもし、と声をかけて返事がないのを確認した後、ラジカセにコンセントをつなぎ、紫のラベルのカセットテープを再生する。

 ラジカセのスピーカーから、お経が鳴り響く。

 ラジカセのスピーカーのあたりに受話器を置いて、男はそれを放置する。


 しばらくして、男が受話器を取ると、ツーツーツーと電話の切れた音が鳴っていた。

 男はお経も捨てたもんじゃない、と見直したそうだ。


 今の時代、スマホなどは保留音を自在に設定できるが、それをお経にするのはお勧めしないよ、と笑いながらその男は言った。





でんわ【完】

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