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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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だんごさま:01

 少女の母の妹、その旦那、要は親戚の田舎に夏休み遊びに行った時の話だ。

 海辺の町で、少女が泊まる親戚の家からも海が見えるようなところだった。


 小さな漁船に乗せられて、針に餌をつけずに海に投げ込んだだけで魚が食いつく様な、そんな釣りを楽しんだ後、小さな無人島に少女は連れられて行った。


 無人島、と言ってもある程度、人の手が入った島で、コンクリートの地面がある様な、そんなちょっとした小さな島だった。

 その島の小さな入り江の砂浜で少女達は遊んでいた。


 ふと少女が海から上がり島の方を見ると、少女の背丈もない小さな鳥居が見える。

 石造りの古い鳥居だ。

 少女がその近くまで行ってみると、鳥居の先は小さな洞穴になっており、その中にやはり石でできた祠のようなものが立てられていた。


 親戚の者曰く、ダンゴ様という蛸の神様を祀ったものだそうだ。

 少女は昼食に持ってきていたおにぎりを一つ、その祠の前に供えてやった。


 その夜のことだ。

 田んぼも近くにあり毎晩蛙の鳴き声がうるさくて寝れない程であったのに、その日はとても静かだった。

 海で遊んでいて疲れていたこともあり、少女も床に就いてすぐ眠りに着く。


 眠りについたはずなのだが、少女は夜中に眼を覚ます。

 部屋が明るくなっているせいだ。


 いつの間にかに部屋の雨戸が開き、硝子の戸と障子だけになっている。

 そこから明るい月明かりだろうか、とにかく明るい光が入って来ていて、少女の目を覚まさせたのだ。


 少女はその幻想的な光景に魅入り、身を起こす。

 しばらく障子を見ている。

 その障子を開ければ、どんなに綺麗なお月様を見られるのだろう、と少女が考えていたときだ。


 障子に人影のようなものが見える。

 人影のようなもの、と言ったのは、それが少女からすれば人かどうかわからなかったからだ。

 とりあえず足はある。ちゃんと二本人間の足のようなものがあることが影でもわかる。

 だけれども、上半身がおかしい。

 どう見ても腹までしかない。

 胸の部分が魚の頭部のように尖っている。

 昼間、釣りをしていたせいだろうか、少女にはそれが魚の頭に見えたのだと言う。

 そんな奇妙な人影なのに不思議なことに少女は恐怖をまるで感じなかった。


 その人影がよたよたと大きく体を揺らしてやって来て、障子の前に座り込む。

 そして、くぐもった声で、水の中から無理やり声を出すような、うがいをしながら喋る様な、蛙が鳴く様な、そんな声でその障子に映る人影は少女に語り掛けて来た。


 自分はダンゴ様の使いの者だ。

 ダンゴ様はそなたをたいそうお気に召した。

 なので嫁に迎えたい、一緒に来てくださらぬか。


 そんな内容のことを言われた。

 ただ実際は方言やら難しい言葉が入り乱れていて、それほど鮮明に少女には伝わらなかった。


 少女はまだ小学生だったので何も考えずにとりあえず、結婚したくない、と、そう答えた。

 そうすると、その人影はあわただしいように去っていった。


 翌日、少女がそのことを話すと大慌てとなった。

 また部屋の雨戸もちゃんとしまったままになっていた。





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