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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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りょうのななふしぎ:05

 とある女子寮に七不思議がある。

 ただし、不思議の数は七つはない。


 これはその五番目の話だ。




 女子寮がある。

 大学の女子寮だ。

 その大学が運営しているわけではないが、昔からその大学の近くにあり、大学に通う者がその寮をかり、卒業したら自然と出ていく、そんな女子寮がある。


 古い建物なので色々な不思議な話もある。

 これもその話の一つだ。




 この寮には個別の風呂はない。

 大浴場とまでは行かないまでも、そこそこ広い共同の浴場がある。


 一階というよりは半地下に作られた浴場で、やはり少し古めかしい。

 床は昔ながらのタイルだ。

 半地下なので、浴室の窓は浴室の天井側にしかついていない。

 その為か、少し浴室自体が薄暗く昼でも不気味なのだ。


 この浴室の清掃は当番制だ。

 大概の寮での世話は、寮母さんがやってくれるのだが、寮母さんは腰が悪く、少し広い浴室の清掃は困難となってしまっているからだ。


 天井側に着いた窓はもちろん曇りガラスで、外からも中からも、窓の向こう側を鮮明に見ることはできない。


 ただ、浴室の掃除をしているとき、たまにその窓から覗かれることがあるそうだ。

 覗き魔?


 いや、違う。

 そもそも浴室として使っているときは、覗かれたという話は聞かない。

 風呂掃除をしているとき、窓から覗かれるそうだ。


 それにただ普通に覗かれるわけではない。

 横に細長い窓硝子窓硝子いっぱいに顔のような物、それも顔を横にするのではなく立って覗き込むように写り込むのだが、この浴室は半地下だ。

 そのように覗き込むのは無理なのだ。


 どういうことかというと、浴室の外は、窓のすぐ下は、すぐ地面なのだ。

 どうやっても、窓いっぱいに、顔を近づけることはできない。

 顔が横向きなら、まだわかる話だが、実はそれも無理だ。


 この窓には実は覗き対策に、コンクリートで作られたひさしが外側についており、そもそも顔を近づけて覗き込むことなどできやしないのだ。

 そもそもが、横に細長い窓いっぱいに写り込む顔のような影など、人間の物ではない。


 何か悪さをするわけでもないが、まるでちゃんと掃除をしているか、それを確認するかのように、この浴室を掃除していると覗き込んでくる顔が現れるのだ。


 浴室を覗き込む顔、として、この話もこの寮だけで語り継がれる。




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