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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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りょうのななふしぎ:02

 とある女子寮に七不思議がある。

 ただし、不思議の数は七つはない。


 これはその二番目の話だ。




 女子寮がある。

 大学の女子寮だ。

 その大学が運営しているわけではないが、昔からその大学の近くにあり、大学に通う者がその寮をかり、卒業したら自然と出ていく、そんな女子寮がある。


 古い建物なので色々な不思議な話もある。

 これもその話の一つだ。




 この寮のトイレは共同トイレで、学校や公衆トイレを想像してもらうと想像しやすいかもしれない。

 ただ古い寮なので、共同トイレも古く綺麗とはいいがたい。


 個室を仕切っている壁も戸も木材で何度か上からペンキを塗られたことが伺えるようなものだ。


 床と壁や戸の間が五センチ以上も開いている。

 おかげで誰かが個室の前を通れば、すぐに分かるくらいだ。

 そして、それ以上に天井と個室の壁と戸の間は開いている。

 もちろん人間が覗き込めるほど個室の壁は低くはないが、他の共同トイレの個室と比べると壁が低い印象を受ける。


 そんなトイレにも怪異はいる。

 いや、むしろトイレは怪異の宝庫だ。


 女はこの寮に住みだして二年目になる。

 このトレイは古臭くてどうも苦手だ。

 女が入る前は便器も和式の物だったという噂もある。


 そんな噂もあるくらいだ。

 便器自体は比較的新しい洋式のものだ。

 人が来るとセンサーで勝手に便座の蓋が開いたりするくらいだ。


 ただ、この古臭い共同トイレには似合っていないと、場違いのように女には思えた。

 そんなことを考えつつ、寝る前に用を足しているときだ。


 ピッ、ウィーン、ピッ、ウィーンという音が聞こえて来る。

 トイレのセンサーが良すぎて、トイレの個室の前を歩くとトイレの便座のセンサーが反応してしまうことがあるのだ。

 女もそれだと、そう思った。

 誰か来たのだと。


 そして、三番目のトイレ、女が入っているトイレの前も、その誰かが通る。


 だが、それを見て女はギョッとする。

 床と壁の隙間から見えたのは素足だった。


 トイレ用のスリッパはあるはずなのに。

 女が見たものは素足だった。


 奇妙な人もいるもんだ、と、素足の人物を女は思い浮かべる。

 心当たりがありそうな人物は数人いる。


 住む者が十人にも満たないこの寮で、素足で共同トイレに入ってくる人物が複数の思い当たりがあることに女は笑う。


 女が笑ったからか、そのせいかどうかは分からない。

 外にいる人物の足が止まる。


 笑い声が漏れてしまったのかと、女は静かに戸の方を見る。

 だが、女は逆に視線を感じる。


 上からだ。

 女は恐る恐る視線を感じる方を、戸と天井の間を見上げる。


 そこには顔があった。


 恐らくは女性の顔で、大きな、この古いトイレの天井と壁の間を埋めるかのような、巨大な顔だ。


 ぎょろりとした黒い眼、白い肌、ぼさぼさで長く黒い髪の毛。


 通常の人間の四、五倍はある巨大な顔が、女がいる個室を覗き込んでいた。

 女は悲鳴を上げ、そのまま気絶する。


 翌日、女が目を覚まし、トイレで見たものを大声で語りだす。

 だが、たまに何かがいるが、それに覗かれたことはなかった、というのが寮の住人たちの見解だった。


 トイレを覗く大きな顔、として、この話もこの寮だけで語り継がれる。






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