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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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りょうのななふしぎ:01

 とある女子寮に七不思議がある。

 ただし、不思議の数は七つはない。


 これはその一番目の話だ。




 女子寮がある。

 大学の女子寮だ。

 その大学が運営しているわけではないが、昔からその大学の近くにあり、大学に通う者がその寮をかり、卒業したら自然と出ていく、そんな女子寮がある。


 古い建物なので色々な不思議な話もある。

 これもその話の一つだ。


 この寮ではよく電気を消される。

 電気のスイッチも古い物で黄ばんだ元は白かったパネルに元は黒かった黄ばみくすんだ摘まみがあるスイッチだ。


 一人で余暇を過ごしているとき、課題をやっているとき、急に何者かがその部屋の電気のスイッチを切って行くのだ。


 ついでに、この寮に個別のトイレはついておらず共同トイレなのだが、そこでもよく消される。

 学校などのトイレを思い浮かべてくれればいい。

 そのトイレで個室に入っていると、トイレ全体の電気を消されるのだ。


 この寮に入ったばかりの新入生の女は、誰かの悪戯だと思っていた。

 寮に住む先輩たちは誰も良い人ばかりだが、それでもこんなくだらない悪戯をするのだと、そう思っていた。


 寮に住む同じく新入生の友人に話と聞くと、自分もされていると、そう言った。


 なので、女はその友人と共に自分の部屋で、犯人を、電気を消していく犯人を特定するべく、静かに待っていた。

 犯人を特定し、文句を言ってやるつもりだった。

 

 夜の十時を回った頃だろうか。

 女の自室の扉が音もなくスッと開いていく。

 女は友人の肩を叩き、無言で開いていく扉を指さす。


 友人も扉に視線を移す。

 ほんの少し開かれた扉から、青白い手がスッと伸びて来る。

 女は扉の前まで一気に飛び、その手を掴む。


 その手は氷のように冷たかった。

 また湿っていた。

 手を洗ったばっかりのように、まだそれが渇いてないかのように、濡れていた。


 女はそれでもその手を離さない。

 その手を、犯人を特定するために引っ張る。


 そうすると抵抗もなくその青白い手が引かれていく。

 そして、その結果、その手は伸びた。

 手首のところから、まるで白い布のように、宙にはためくように、手が、その手首が、伸びた。


 女は悲鳴を上げ、その手を放す。


 そうするとその青白い手は、まるで掃除機のコンセントが巻かれるように、凄い勢いで扉の外へ引き込まれていった。

 女の悲鳴で、人が、寮に住む先輩たちが集まってくる。


 事情を話すと、ここにはそう言うものがいるのだと、そう教わった。


 だが、その手を引っ張った者は、女が初めてだという。

 手を見たものは多い。その手を触り、その冷たさに驚きほとんどの者はそこで手を放す。

 だが、女はその手を引っ張ったのだ。


 まさか伸びるとは思っていなかったが。


 電気を消す伸びる手、として、この話はこの寮だけで語り継がれる。

 







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