表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それなりに怖い話。  作者: 只野誠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

386/680

えすかれーたー

 男の通勤途中の、乗り換えの駅にエスカレーターがある。

 とても長いエスカレーターだ。

 男は会社に行くときは、そのエスカレーターを上り、帰宅時には下る。

 そう使っていた。

 また、男はかなりの遠距離通勤をしている。

 ほぼ始発の時間から地元をでる。

 そのせいか、乗り換えの駅に着いた時も、まだ人は疎らだ。

 そもそも、男の住んでいるところは都会でもない。


 長い、とても長いエスカレーターを男は見上げる。

 男はこのエスカレーターを上がり切った時に、振り返って下を見下ろすのが好きだった。

 まあ、混んでいる時というか、他に人がいる時は迷惑だからやらなかったが。


 だが、今日は人も疎らだ。

 男が下からエスカレーターを見上げると、かなり先に、派手な赤い服の女がいる。

 他に人がいるのはその人くらいだ。

 普通の社会人、というよりは、飲み屋で働いていて朝帰り、と言ったような恰好の女性だ。

 それくらいの派手さがある。


 眩しいくらい白く照らされたエスカレーターに真っ赤な服がよく映える。


 男は特にやましい気持ちもなくその赤い女を見てしまう。

 あまりにも真っ赤な服でどうしても視線がその女に行ってしまう。

 あまり見るのも失礼だろうと、視線を外すのだが、気が付けば赤い女を見ている。


 本当に真っ赤だ。


 結局、男はエスカレーターを上がり切る数分の間、その赤い女を見てしまっていた。

 赤い女がエスカレーターを上り切り男の視界から見えなくなる。

 そこで男は正気に戻る。

 朝から何をしているのかと。


 男は気持ちを切り替え、エスカレーターを上り切ったところで一息つく。

 そして、周りを見渡すが先ほどの赤い女はもうあたりにはいない。


 男はエスカレーターを見下ろす。

 他に人はいない。


 遥下方までエスカレーターが続いている。

 気分がどこか清々しくなる。

 まるで山の頂上に登ったかのような、そんな気分に男がなっていると、不意に後ろから声を掛けられる。


 あなた、じろじろ見ていたでしょう、と。


 男が驚いて振り返ろうと瞬間、男は押される。

 そして、男はエスカレーターを転がり落ちていく。

 長い、とても長い、エスカレーターを。




 男が目覚めたのは病院だ。

 いろいろと事情聴取をされたんだが、男自身が脚を滑らせた、と言うことになった。

 男は女に押された、と主張したのだが、監視カメラに男が一人で転がり落ちる様子だけが映像として残っていたのだ。


 そもそも、映像には赤い服の女など初めから映っていなかった。


 ただ、それだけの話だ。









えすかれーたー【完】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ