こたつ
少女はコタツで暖を取っていた。
コタツの中に入っている下半身は暖かいが、コタツから出ている上半身は寒い。
上に何か羽織るものが欲しいが、コタツからは出たくない。
少女はコタツで温まりながら、そんなことを考えていた。
テレビのリモコンが少し離れたソファの上にあるのも、少女からすればそれも残念だ。
仕方なく少女はコタツに入りながらスマホをいじる。
だが、そのスマホの電池残量も、もう残り少ない。
少女はスマホをいじるのやめて、上半身を倒して寝っ転がる。
コタツからはみ出て、床の冷たさを少女が感じる。
なので、このままコタツの中に潜り込んでしまおうかと、そう考えて、実際にコタツをめくった時だ。
目が合ったのだ。
コタツの中に顔があった。
眼のくぼんだ、やせ細った、遠赤外線のランプに照らされているのに、灰色をした顔と目が合ったのだ。
少女は一瞬だけ固まるがすぐにコタツから逃げ出す。
そして、コタツの電源をコンセントから乱暴に抜いて様子を見る。
コタツは微動だにしない。
少女は上の天板をどかし、コタツの掛布団を剥す。
中には誰もいない。
いるわけもない。
念のためにと少女は家の中を見て回るが、家の中には誰もいない。
そうこうしていると、少女の両親が買い物から帰ってくる。
そして、丸裸にされたコタツを見て、どうした? と少女に聞いてくる。
少女の話を父親は信じないが、母親は信じる。
一人で使っていると、妙な視線を感じる時があると。
そこで父親が今晩コタツを使ってみる、と言い出した。
少女と母親は止めたが、父親は言うことを聞かない。
その晩、父親はコタツで寝た。
父親は案の定、風邪を引いた。
それから、少女の家ではコタツを使わなくなった。
そんな話だ。
こたつ【完】




