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まれびとのしま

 少女の実家はとある地方の大きな旅館を営んでいる。

 大きくなったら少女がこの旅館を継ぐのだと言い聞かされて育てられていた。

 今はもう使われていない旧館と呼ばれる、今は少女の家族と、主にその祖母が住んでいる家として使っている古い平屋がある。

 それでも大きな建物であり、中庭には庭園があり、大きな池があるほどだ。

 しかも、池の中央には小さな小島まである。


 小島にはいくつもの石碑のようなものが建てられている。


 この家に住んでいる少女でさえ、その小島には立ち入ったことがない。

 少女が幼い頃より、その小島どころか、池にすら立ち入ることを厳しく禁じられてきたからだ。


 ある日、祖母がその小島を見ながら縁側でお茶を飲んでいた。

 少女はそれとなく、小島のことを祖母に聞いてみた。

 いつもはそれだけでもいい顔はされないのだが、その時はなぜか祖母も話してくれた。


 祖母曰く。


 あの島は稀人様の小島で生きた人間が踏み入れていい場所ではない、とのことだ。

 石碑も稀人様をたたえるものなのだとか。


 少女が稀人様ってなに? と聞くと、祖母は答える。


 外から来た神様だと。


 そして、うちは古い旅館だから外から神様も泊まりに来るのよ、と祖母は笑った。

 それからしばらくして、祖母は亡くなった。


 御通夜の時だ、旧館を潰すという話が親族から持ち上がる。

 だが、少女の両親はそれを頑として否定する。


 寝ずの番と言って朝まで祖母を寝ずに見守る夜に、親族の男の一人が少女に稀人様の小島の話をする。


 その昔、この村が飢饉に襲われ食うに困ったとき、旅人を稀人に見立て殺してあの島に埋めたという伝承があると。

 旅人を稀人に、神様に見立て、小島に留めることで村を飢饉から守って貰っていたのだと。

 本当か嘘かはわからないが、両親はそれがあるから、あの旧館を取り壊せないのだと。

 もし本当に骨でも出てきたら大変だからだと。

 そんな話を聞かされた。


 すぐにその親族の男は、両親に見つかり追い払われたたが、その話は少女の心に深く残った。


 そして、少女は思い出す。

 つい数年前、流行り病の影響で旅館の経営がうまく行っていないときに、新しくあの小島に石碑が一つ増えたことを。

 あの石碑が増えて以来、なぜかお客様が増えたことを、少女は知っている。





まれびとのしま【完】

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