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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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ほうもんしゃ

 夕方、日が暮れたころ。

 窓から門の様子が暗がりで見えなくなったころ。


 チャイムが鳴る。


 ピンポーンと鳴る。

 女が出ると誰もいない。

 そんなことが、何日も続く。

 女が夫に相談しても、子供の悪戯だろう、と相手にされない。


 窓から玄関の様子が見える作りなのだが、そのチャイムが鳴らされる時間は日が落ちた後で、誰が鳴らしているのか女からは見えなかった。

 そんな時、女は自分のスマホに暗視モードというのがあることを知る。

 女も恐らくは近所の子供なのだろうと、そう考えているが、それでも迷惑は迷惑だ。

 特定して、文句を言ってやるつもりでいた。


 スマホスタンドを使い、スマホを固定して窓から門を撮影する。

 画角的にも門のところにあるチャイムをばっちり撮れている。


 女は日が落ちた後、スマホを暗視モードで録画しながらチャイムが鳴るのを待つ。

 そして、その日もチャイムが鳴る。


 女は念のため、玄関の戸を開けて、門を確認するがやはり誰もいない。


 戸締りをした後、女はスマホを確認する。

 撮っていた動画と止めて、その動画を見返す。


 暗視モードと言うことで画質はそれほどよくなかった。

 でも、誰か人物を特定するくらいはできそうだった。

 しばらくはただ門が映し出されているだけだ。


 しばらく女が撮った動画を見ていると、画面に変化がある。

 白い靄だ。

 人型の靄だ。

 それが門の前にやって来て立ち止まる。

 そうすると、ピンポーンと家のチャイムが鳴る。


 女は慌てだす。

 この白い靄はなんなのだと。

 だが、撮っていた動画はまだ終わらない。


 玄関を開け、女が門を確認する様子が映し出されている。

 その間に、その白い靄は門をすり抜け、家の中へと入ってきているのだ。

 そこまでスマホで撮った映像には映っていた。


 女は一瞬だけ呆然としたが、今、あの得体の知れない白い靄は家の中にいるのだと、そのことに気づいた。

 女は慌てて家の中を見回すがそんな物を見つけ出すことなどできる訳もない。


 そこで女は気づく。

 暗視モードのスマホのカメラなら映るはずだと。


 そして、スマホの暗視モードでカメラを起動する。

 そうすると、映るのだ。

 数々の白い靄が家の中にいるのが。


 女は悲鳴を上げて家から逃げ出す。

 幸い、スマホは手に持っていたので、それで夫に連絡を取り、事情を話す。

 だが、夫は信じてくれない。

 ならばと、女は撮った動画を見せようとするが、なぜか保存しておいたはずの動画のファイルが壊れていて再生できなかった。


 女は夫が信じてくれないので、そのまま実家に帰った。

 その結果、色々話し合った結果、夫も仕方なくその家を手放すことを選んだ。


 最終的にはだが、女に実家に帰られ一人でその家に住んでいた夫の話でも、確か女の、妻の言う通り、あの家には何かいたような気がする、と納得はした様子ではあった。


 ただ、それだけの話だ。





ほうもんしゃ【完】

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