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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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かかし

 少女の住んでいるところは田舎だった。

 近所は、田んぼや畑の方が家の面積よりも大分多いような、そんな場所に住んでいた。


 だからといって、年が明けたばかり、季節外れの時期に、ゴミ捨て場に案山子が置かれる様な事は滅多にない。

 捨案山子という奴だが、ゴミ捨て場に案山子の姿のまま、捨てられているのは少女も初めて見た。


 少女は案山子もそのままゴミ捨て場に捨てて良いのか、と、それを見て少女はそう思ったくらいだ。


 その案山子は昔ながらの素材で作られていた。

 竹と、その枝を使って作られている。

 言うならば、竹ぼうきと同じ素材だ。

 それにボロボロの服を着せ、袋をかぶせ、顔を作り、麦わら帽子をかぶせてある。

 そんな案山子がゴミ捨て場に立てかけられているのだ。


 少女は案山子としては、まだまだ使えそうなのに、そう思いはしたが、そのゴミ捨て場の前を通り過ぎる。

 そして、その時気づく。

 その案山子が捨てられている理由を。


 今時、珍しくほぼ竹で作られているせいか、虫の巣になっていたのだ。

 冬眠でもしているのか、案山子の内側にはたくさんの虫達が身を寄せ合っていたのだ。

 それが近くを通るだけでわかるくらいにはびっしりと虫達が案山子の中に詰まっている。


 確かにこれを下手に解体したら、虫が散って大変なことになる。

 少女も案山子がそのまま捨てられていた理由がわかる。

 けど、それならせめて、ビニール袋にでも入れておいて欲しいと思う。

 冬眠中の虫が這い出ることがなくともだ。


 少女もあまり関わらない方が良いと、そのゴミ捨て場を後にする。


 ゴミ捨て場から少し進んだその時だ。

 少女は異様な気配を、背後から、ゴミ捨て場の方から感じる。


 少女が振り返ると、そこには案山子が立っていた。

 さっき見たときは立てかけられていたはずの案山子が、今はまっすぐ道の真ん中に立っている。


 少女が驚いてその光景を見ていると、案山子が動き始める。

 奇妙な動き方だ。

 しいて言えば、案山子の首に縄をかけ、それを上から引っ張って動いているような、案山子からすると少し引きずられる様な、そんな動き方だ。


 少女は恐怖に駆られ、その場から逃げ出す。

 そうすると少女を追うように案山子も動く速度を上げる。


 少女が必死に走っている。

 その横を案山子が追い越し、そのまま畑の中へ行き、案山子はまだ何も植えられていない畑の真ん中に自ら刺さった。


 少女は茫然とその案山子を見たが、すぐに自分の家へと逃げ帰っていった。

 その夜、少女はあの案山子はまだ捨てられたくなかったのだとそう思っていた。


 次の日、その案山子が畑の端で焼かれているのを少女は見た。

 思わず少女は、その焼かれている案山子に手を合わせたのだという。


 ただそれだけの話だ。





かかし【完】

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