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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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かしや

 男が家に一人でいると、と言っても男がいる家は貸家で男が独りで住みだして一カ月と言ったところだが、まあ、それは今はどうでもよくて、声が聞こえてくるのだ。

 くぐもった声だ。


 テレビの音量を最大までして、音割れしたような、そんな声だ。


 ただ、何を言っているのか聞き取れない。

 テレビの音量を大きくして音割れしたような声だが、その声自体の音量は大きくはない。

 どちらかと言えば、小さい。

 さらに、くぐもった声で何かを言っているのか聞き取れない。


 男ははじめテレビかラジオでもついているのか、そう思って、それを、その声を出している物を探した。

 だが、そのような物はどこにも見つからない。


 それに声のする部屋へ行くと、その声はその部屋からは聞こえなくなるのだ。

 その部屋に行くと、また別の部屋から声が聞こえてくる、そんな感じだ。


 男は首を捻る。


 一カ月に満たない間だが、この家で暮らしてきてこんなことは初めてだ。

 壁の中から声が聞こえてくるのか? と、男は考えたが、壁自体は誰かが入れるほど厚くない。

 壁に耳を当ててもそう言った感じではない。

 男はどうにかその声発生源を探そうとするのだが、どうやっても見当たらない。


 仕方がないので、男はこの貸家を借りた不動産に連絡する。

 流石にこのままにしておくのは気味が悪い。


 男は奇妙な声がどこからともなく聞こえて来る、と、そう告げると、不動産の担当者は慌てだす。

 そして、はやくその家から逃げでください、と伝えて来る。

 男は何を言っているのか、分からないが、とりあえず家からできる。

 余りにもその担当者が必至だったからだ。


 そして、しばらくこちらでホテルを用意するのでそちらで過ごしてください、とも言われる。


 男は訳も分からない。

 ただ、担当者のようすがただ事ではなかったので、訳も分からないまま、男もその言葉に従う。


 不動産屋が用意したホテルはビジネスホテルだった。

 なんとなく高級ホテルとイメージしていた男は落胆する。

 そして、後日、不動産の担当者に詳しい話を聞こうとする。


 だが、知らない方が良いというか自分からは言えない、と、不動産の担当者も困り顔で頭を下げながらそう言った。

 で、結局どうなったのか。


 男は別の貸家に引っ越しすることになった。

 あの不気味なくぐもった声が何だったのか、男にはわからないままだ。


 後日、男がその貸家の前を通ると、お祓いのようなことをやっていたのを目にした。

 まあ、そう言うことなのだろう、と、男も深く考えないことにした。


 知らない方が良いことは確かにあるのだ。

 真相を知ったところで、何も良いことはない。






 

かしや【完】

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