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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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かたにつくかお

 男は正月休みで久しぶりの実家に帰ってきていた。

 久しぶりの実家だが、男の部屋は既になく客間で寝泊まりをしている。


 実家は実家で落ち着きはするのだが、自分の部屋が物置にされていたのは、男にとって少し寂しい物がある。


 男は物置代わりになった自分の部屋を見て回る。

 自分が実家に残して行ったものもだいぶ残してくれている。


 下の階からは親戚たちが集まり宴会をしている喧騒が聞こえて来る。

 今の時代、正月だからと親戚たちがあれだけ集まるのは、男の実家が田舎にあるからだろう、少なくとも男はそう思っている。

 ただ、男はその宴会があまり好きではない。

 男は下戸だからだ。

 酔っ払いの相手を延々とさせられるのは気が滅入る。


 男はその喧騒もほとんど聞こえない、この物置となった部屋を見て回る。

 男が学生時代に買った奇妙な置き物や当時はまっていた漫画も残っている。

 男はその漫画を手に取り、床に座り込んで読み始める。


 そうしていると、男の右肩に何かがポトリと落ちて来た。

 男は虫でもいたのか、と慌てて右肩を見るが何もいない。

 気のせいだったかと男は再び漫画を読もうとしたときだ。


 右肩で何かが動く感触がある。


 男はやっぱり虫か、そう思い左手で右肩を払う。

 何も感触はない。

 振り払われる物もない。


 男は改めて右肩を見る。

 何もいない、いや、視界の端に何かいる。

 肩のギリギリのところに、白い何かが自分の肩にぶら下がるかのようにいる。

 本当に視界のギリギリで、ぼやけていてよく見えないのだが、それは人の顔の様に、白い顔の様に見えた。


 男は悲鳴を上げてそれを左手で払おうとする。

 だが、それに触れることはできない。

 男の左手は素通りするだけだ。


 視界の端でそのぶら下がっている白い顔が、ニタァと笑う。


 男は慌てて、部屋を飛び出して大勢いる広間へ向かう。

 そこでは親戚が集まり宴会が開かれているからだ。


 そこに行って、男は右肩に顔が、と叫ぶのだが、男は親戚に奇異な目で見られただけだった。

 それでも男は一人でいるのが怖かったので、そのまま宴会に参加する。

 いつの間にかに、肩の顔は居なくなっていた。


 男にはそれがなんだったのか、今でもよく理解できない。

 もしかしたら、男に新年の宴会に参加して欲しい誰かの生霊だったのかもしれない。

 それが本当かどうかはわからないが、ただ、それだけの話だ。







かたにつくかお【完】

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