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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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いそがしい

 忙しい、それが男の口癖だった。

 実際に男が忙しいのかどうか、それは時によりだ。


 忙しい時も男にはあれば、暇な時もある。


 そんな感じだ。

 年がら年中忙しいというわけではない。

 ただ単に、男の口癖が、忙しい、というだけの話だ。


 勘違いしてほしくないのは、男がさぼり魔というわけでもない。

 仕事はしっかりこなすし、仕事自体も早い。


 本当に口癖で言っていているだけなのだ。


 周りの者も、そのことをちゃんと理解している。

 なんなら、男も、忙しい忙しい、と口癖で言ったと、ハッ、と気づいたような顔をして、つい口癖で言っちゃうんだよね、という顔をして見せるくらいだ。


 そんな男が、忙しい忙しいと、言いながら、仕事で駆け回っていた時だ。

 道に大きな荷物を持って立ち往生しているおばあさんを男は見かける。


 男は、忙しい忙しい、と言いながらも、そのおばあさんを助けてやる。


 おばあさんは、お忙しい時に申し訳ありません、と言って深々とお辞儀をする。

 男は、ただの口癖なので気にしないでください、と、おばあさんの目的地までその荷物を運んでやってそう言った。


 その後、男は本当に急い会社に帰る。

 上司に遅かったじゃないか、と言われて、男は正直におばあさんを助けてやっていたことを告げる。

 そうすると、上司が、何か気づいたような顔をして、ああ、お前だったのか、うちの社員に助けられたとお礼の電話があったんだ、と言った。


 男は不思議そうな顔をする。

 そして、連絡先も会社名も名乗ってない、と上司に告げる。

 そうすると、上司も不思議そうな顔をして、○○寺から電話があって俺が出たから間違いない、と、そう言った。


 〇〇寺。確かに男がおばあさんを助けた場所の近くにある寺だ。

 男は、あのおばあさんが人間ではなかったのではないかと、そう考えた。


 それからだ。

 男に様々な仕事が舞い込むようになる。

 男の口癖が、口癖ではなく本当に忙しくなっていた時、男は気が付くと出世していた。


 男は、毎年、おばあさんを助けた時期には、どんなに忙しくても、その〇〇寺までお参りするようにした。

 ただ、それだけの話だ。





いそがしい【完】

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