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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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ゆうしょく

 夕食を食べる。

 男は自室で仕事を終え、台所へやって来ていた。

 が、食材が何もない。


 ここ最近仕事が忙しく、買い物にも行けていなかった。

 仕事のきりが着くのが大体、毎日夜遅くになるからだ。


 仕事が終われば、夕食を作って、風呂に入って、寝る。

 起きたらまた仕事。

 まだ在宅だっただけ、男はマシと思いつつも、そんな生活を送っている。


 ただ、今日は食材も何もない。

 本当に何もない。


 男の住んでいるところは郊外で半分田舎のような場所だ。


 車を出せば、二十四時間開いているスーパーもあるのだが、今日はそんな気力も残っていない。

 だが、腹は減った。

 男は何かないか、乾麺でもないかと台所を探す。

 本当に何もない。


 いや、小麦粉だけあった。

 ソースもある。


 なら、これを焼いて腹を満たそうと、男は考える。

 明日の昼は店屋物で済ませよう。

 忘れないように夜の分も昼に頼んでおけばいい。

 今日はもう時間が時間なので、お店は開いていないだろうが、明日はそれでいい。

 明後日週末で休みだ。


 忘れずに買出しに行ってかなり多めに買いこまないと、男はそう考える。


 買出しを頼めるサービスもあるだろうが、男の住んでいる場所では対応してないだろう。

 男も調べたことないが、そんな物をこの辺りで見かけたこともない。


 とにかく今日は、小麦粉を水で溶き、それを焼いて食べるしかない。

 ひもじい、と思いつつも、今日はこれしかないのだ。


 空腹なこともあり、実際にフライパンで焼いてみるとおいしそうな匂いがする。

 ただ具材も何も入ってない、卵すら入れてない本当に小麦粉と水だけの物だ。

 実際に口にしてみても、ソースの味しかしない。


 それに満足感もなく腹も大して膨れない。

 男が仕方なく二枚目も焼こうとしたときだ。


 食卓に、自分が座っている席の対面に、灰色で半透明な、まるで遺影のような姿の人物が座っていることに気づく。

 男はボールに入れた小麦粉を抱えたまま固まる。


 その灰色で半透明の人物は、恐らく中年の男性で、悲しそうな顔をして食卓を見ている。

 あまりにもその灰色の男は悲しそうな顔をしているので、男はもの悲しいのはこんな食事をしなくちゃいけない俺の方だ、と心の中で強く思ってしまう。


 そうすると、灰色の男は悲しそうな視線を男に向けて、すぐに消えていった。

 

 それが何だったのか、男にはわからない。

 だが、男は週末には奮発してかなり豪華な食材を買ってきていた。

 そして、男は金ならあるんだ、時間がないだけだ、と奮起して、その豪華な食材を怒りながら食べて行った。


 ただそれだけの話だ。




ゆうしょく【完】

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